昨今のコロナ感染の世界的拡大により、この年度末という最悪タイミングで、株価が暴落しており、会社によっては、所有している有価証券の時価が取得価額を大きく下回ってしまい、決算にどのような影響を与えるのか頭を悩ましている経営者の方も多いのではないでしょうか。
関連資料によれば、通常の場合、有価証券の会計処理は保有目的に応じ以下のように整理されます。
【売買目的有価証券】
期末に時価評価をして評価差額がその都度、損益計算書に計上される。
【満期保有目的有価証券、子会社・関連会社株式】
原則として期末に時価評価せず取得価額で評価。
【その他有価証券】
期末に時価評価し、その評価差額は貸借対照表の純資産の部に計上。
しかし、売買目的有価証券以外の有価証券でも、価値が取得価額に比べて「著しく下落している場合」で、「回復する見込みがない場合」は、経済的実態を税務諸表に反映するため、評価差額を損益計算書に計上し、かつ、価格下落後の価額を貸借対照表に計上する必要が出てきます。これを「減損処理」といいます。
この処理評価により、評価差額(損)が当期損益を直撃する事態となります。
まず「著しく下落している場合」とは何なのか?ですが、これは、有価証券に時価のある場合と、ない場合で異なります。
【時価のある有価証券】
個々の有価証券の時価が、取得原価に比べて50%程度以上低下した場合で す。この場合、合理的な反証がない限り、時価が取得原価まで回復する見込
みがあるとは認められないため、減損処理を行います。
【時価のない有価証券】
株式の実質的価額が取得原価に比べ50%程度以上低下した場合です。
この場合、回復可能性が十分な証拠によって裏付けらる場合をのぞき、期
末に相当の減額を行い、評価差額を当期損失として処理します。
時価のある上場株式の場合、期末の時価が簿価の50%を割っても、「合理的に株価が回復する可能性が高いことを証明できるか」が問題です。例えば、時価の下落が一時的なものであり、期末日後、概ね1年以内に時価が取得原価にほぼ近い水準にまで回復する見込みのある場合は減損処理が不要となります。
(ご参考 中小企業の会計に関する指針 企業会計基準員会 https://www.asb.or.jp/jp/accounting_standards/misc/misc_others/2019-0306.html の22、「有価証券の減損」。または中小企業庁HPより 中小企業の会計34問34答の問12。 https://www.chusho.meti.go.jp/zaimu/kaikei/pamphlet/2010/download/Kaikei.pdf )
今回のような、一時的(と思われる)株価暴落が決算期末に起こっている場合、決算まで間がないですから、ご自分の会社が所有する株券等の時価と簿価をチェックして、期末の株価しだいで、どのようなシナリオがあり得るか、予め、会計士さんや税理士さんとご検討をしておくべきかと思われます。
しかしながら、今回のパニック的な株価急落、予見できた方もいたのかも知れませんが、多くの方にとっては不意打ちではないでしょうか。本当に厄介なことです。