株式譲渡制限会社のメリットがあまり知られていない?/杉並区の行政書士が解説

定款で自社の株式に譲渡制限をつけて登記しておけば、会社法上は「公開会社でない株式会社(非公開会社)」と位置づけられ、定款自治が広く認められるようになります。例えば、役員任期も延長でき、取締役会の設置義務も免れます。その他にもずいぶんとメリットがあります。にもかかわらず、少し古い調査ですが、中小企業の半分弱しか株式に譲渡制限をつけていないと考えられます。あなたの会社はどうなっていますか?

杉並区の行政書士が解説します。

株式譲渡制限会社とは

株式譲渡制限会社とは、定款の定めによって、株式会社が発行する全部または一部の株式に譲渡制限をつけている会社のことを言います。

本来、株式は自由に譲渡できるのが原則です。しかし、株式間の個人的関係が重視されるような会社で、株式が自由に譲渡できる場合は、いつの間にか、好ましくない株主が登場してくる可能性もあります。このような状態になるのを防ぐために、この仕組みは利用されます。

なお、定款で全部の株式について譲渡制限が設けられている株式会社は、非公開会社と呼びます。もし、株式に譲渡制限がついていない場合は、未上場であっても会社法上は公開会社となり、下に述べるようなメリットは得ることができなくなります。

株式に譲渡制限をつけた会社の割合は思ったほど多くない。

一般に、多くの中小企業は株式譲渡制限会社だろうと思われがちです。しかし、平成17年と少し古いデータですが、株式譲渡制限会社は中小企業の48%程度にとどまっているという調査結果があります。

出典:経済産業省 平成17年調査

株式譲渡制限会社のメリット

株式譲渡制限会社は、会社法上は「公開会社でない株式会社」と記載されて、様々な例外的な取扱い(メリット)が認められています。

1. 役員任期を延長できる。

通常、取締役は2年、監査役は4年が任期ですが、公開会社でない株式会社は、それぞれ10年まで任期の延長が可能になります。 (会社法332条、336条)

2.取締役会設置が不要となり、取締役1名から会社設立できる。

公開会社は、取締役会を置く義務がありますので、最低でも取締役が3人・監査役1名が必要です。株式譲渡制限会社は、この義務がないので、取締役1名で会社が設立可能です。 (会社法327条)

3.取締役・監査役の資格を株主に限ることができる

株式譲渡制限会社に限り、定款で取締役と監査役の資格を株主に限定できます。(会社法331条2項、335条1項)

4.相続などでの株の分散を防止できる

非公開会社は、大株主に経営権が集中していることが好ましいため、定款で定めることにより、株主が死亡した場合に、会社が相続人に対して売渡を請求することが可能になります。こうすれば、相続によって株主が分散したり、不都合な人物が相続によって株主になることを防止できます。これができるのは、譲渡制限株式に限られます。(会社法174条)

5.株主総会招集手続きが簡略化される

株主総会を招集するには、取締役は、株主総会の日の2週間前までに、株主に対して通知を発しなければならないのが原則ですが、これが1週間前に短縮されます。 (会社法299条1項)

6.株券を発効しなくてもよい

株券発行会社は、株式を発行・併合・分割したときは、株券を発行する義務がありますがm株式譲渡制限会社は、株主から請求がある場合を除いて、株券発行義務はありません。 (会社法215条)

7.監査範囲を限定できる

株式譲渡制限会社は、定款により監査役の監査範囲を会計に関するものに限定できます。(会社法389条1項)

まとめ

会社設立当時は、公開を目指していた場合などは、株式譲渡制限会社にしていないケースが多いと思います。現状において、公開を目指していないのであれば、定款自治が幅広く認められる株式譲渡制限会社へ定款変更(株主総会特殊決議事項)を検討してもいいかもしれません。

(ご注意)会社の登記業務は行政書士にはできません。ご興味がある方には、司法書士をご紹介いたします。

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