建設工事に関する請負契約の適正な締結・履行を確保するためには、建設工事についての専門知識が必要になります。このため、営業所ごとに、許可を受けようとする建設業に関する一定の資格又は経験を有する専任技術者の配置が必要になります。
一般建設業許可の専任技術者の実務経験の証明について、杉並区の行政書士が解説します。
専任技術者の資格要件
専任技術者の資格要件は、一般建設業許可と特定建設許可とで次のように異なります。
一般建設業許可
1)指定学科修了者で高卒後5年以上もしくは大卒後3年以上の実務の経験
2)指定学科修了者で専門学校卒業後5年以上実務の経験、もしくは専門学校卒業後3年以上実務の経験に加えて専門士か高度専門士の称号
3)許可を受けようとする建設業に係る建設工事で10年以上実務の経験
4)国家資格者
5)複数業種に係る実務経験
特定建設業許可
1)国家資格者
2)一般建設業許可の専任技術者に該当し、さらに許可を受けようとする建設業で発注者から直接請け負う4,500万円以上の工事で2年以上の指導監督的な実務経験
3)大臣特別認定者(特別認定講習を受けて効果評定に合格、もしくは国土交通大臣が定める考査に合格)
※指定建設業(土木工事業・建築工事業・電気工事業・管工事業・鋼構造物工事業・舗装工事業・造園工事業)については、上記1もしくは3のいずれかを満たすこと
一般建設業許可の専任技術者として認められる実務経験とは?
特定建設業許可では実務経験だけで専任技術者にはなれませせん。一方、一般建設業のs専任技術者には、国家資格がなくても、一定期間の実務経験があれば、専任技術者としての資格要件を満たすことができます。
許可を受けようとする建設業に係る建設工事に関して、次のいずれかの実務経験を有する者は一般建設業の専任技術者になることができます。
[1]-1指定学科修了者で高卒後5年以上若しくは大卒後3年以上の実務の経験を有する者
[1]-2指定学科修了者で専門学校卒業後5年以上実務の経験を有する者又は専門学校卒業後3年以上実務の経験を有する者で専門士若しくは高度専門士を称する者
・許可を受けようとする建設業に係る建設工事に関して、専門学校後5年以上の実務経験を有し、かつ、在学中に許可を受けようとする建設業に係る建設工事ごとに指定された学科(指定学科)を修めている者
⇒ 指定学科一覧
[2]許可を受けようとする建設業に係る建設工事に関して、10年以上実務の経験を有する者
[3]-1国家資格者
⇒ 営業所専任技術者となりうる国家資格者等一覧
[3]-2複数業種に係る実務経験を有する者
⇒ 複数業種に係る実務経験を有する者一覧へ
注意点
〇実務経験期間で認められる経験業種は、原則として1業種です。複数業種を経験している場合は、経験期間が重複して計算はされることはありません。ただし、平成28年5月31日までに「とび・土木工事許可」で請け負った解体事業に係る実務経験の期間については、平成28年6月1日以降、とび・土木工事許可及び解体工事業の両方で重複して実務期間として計算できます。
〇実務経験期間は、連続している必要はなく、工事ごとに積み上げて計算できます。ただし、逆に言えば、3年間に「許可を受けようとする建設業に係る建設工事」の期間を積み上げて、2年6か月しかないとすれば、もう少し期間を積み上げるために、建設工事をこなしていないといけないことになります。
実務経験として認められるものと認められないもの
一般建設業許可の専任技術者に認められる実務経験には、実務経験として認められるもの
と認められないものがあります。
実務経験として認められるもの
・建設工事の施行に関する技術上の全ての職務経験であって、工事施行のための指揮・監督や建設機械の操作等、建設工事の施行に携わった経験は実務経験として認められます。
・見習い中の者が技術習得のために行う技術的な経験も認められます。
・建設工事の請負人としての立場で行った経験だけでなく、建設工事の発注者として、設計技術者として設計業務に従事した経験も認められます。
実務経験として認められないもの
・現場の単なる雑務や、事務作業の経験は、技術上の実務経験にはなりません。
・一定の資格がないと実務経験と認められないものもあります。例えば、電気工事及び消防工事は、それぞれ電気工事士や消防設備士でなければ直接工事ができないので、無資格者の経験では実務経験と計算されません。
また、解体工事も、建設リサイクル法施行後(平成13年5月31日)の経験はとび・ド木工事業の許可がある業者での経験又は建設リサイクル法に基づく解体工事業登録を行っている業者での経験でなければ、実務経験として認められません。
対象業種で実務経験を積んだことをどう証明するか?
東京都の「建設業許可の手引き」(2022年版)では以下のように記載されています。
証明期間において、建設業許可を有していた場合
建設業許可通知書又は受付印が押印された建設業許可申請書・変更届・廃業届等の写し
※ 証明しようとする業種に対応するものが必要。ただし、通知書等の全てではなく、過去の建設業許可期間を合理的に推定するに足る分を添付すること(P56の2ア(例)参照)。
※ 東京都知事許可の場合は、許可番号及び許可業種とその許可期間について、様式9号R04_kensetsu_tebiki_allの備考欄に記載することで、上記資料を省略可能です。
※ 大臣・他の道府県許可の場合は、それぞれの許可行政庁へ許可期間をお問い合わせください。
※ 許可を有している場合であっても、実際に工事を行っていた期間の合計が10年以上必要です。
証明期間において、建設業許可を有していなかった場合
業種内容が明確に分かる期間通年分の工事請負契約書・請書・注文書(原本提示)や請求書等の写し等
※ 請求書、押印のない工事請書、FAXで送付されたため原本を提示できない注文書等については、入金が確認できる資料による補足が必要です(電子契約である場合を除く。)。この際、この請求書等は入金確認資料の写し(原本提示)とあわせてお持ちください。
(注 1)期間については、契約書等の最初の資料に記載された日付(契約日、注文日、請負日、工期、請求日等)から最後の資料に記載された日付を通算して証明する年数を上回らなければなりません。ただし、実務については、実際に工事を行っていた期間の合算になります。
(注 2)電気工事又は消防施設工事における無資格者の実務経験は、電気工事士法及び消防法の規定により、原則として認められません。
証明期間の常勤を示す資料
上記の(1.)の資料は、証明する者において工事実績等があったことを示す資料であり、この期間、この専任技術者が証明者に在籍していたことを以て、工事経験を積んだと推定します。そのための確認資料として、P58①に示す資料を、期間通年分用意してください。
P58①の資料 は以下のものです。
(ご参考)東京都の建設業許可Q&Aより抜粋
Q10 以前に在籍していた会社と疎遠になり、代表者から証明書の押印をもらうことができない場合、どうしたらよいのでしょうか。
A10 経営業務の管理責任者の経験や専任技術者の実務経験について、証明者の押印がもらえない場合でも、被証明者が自分で証明することができます。その場合は、被証明者が署名し、個人の実印を押印します。実印は印鑑証明書を添付してください。なお、経験内容の確認資料が別途必要となりますので、手引をご参照ください。
以上のように、専任技術者の実務経験を証明するのは、時間も手間もかかり大変です。お困りのことがあれば、行政書士にご相談ください。
サイト管理者の杉並区の行政書士中村光男です。ホームページにもお立ち寄りください。
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