建設業は、国民にとって大切な事業です。建設業法は、建設工事の適正な施工の確保、発注者も保護、建設業の健全な発達を目的として、一定以上の規模の建設業を営むには許可を必要としています。
建設業の許可を受けるためには、以下の6つの条件が必要です。このうち、「社会保険への加入」は、2020年(令和2年)に新たに条件に加わりました。
1.「経営業務の管理を適切に行うに足りる能力」に関する要件
2. 「専任技術者」に関する要件
3. 「財産的基礎等」に関する要件
4. 「誠実性」に関する要件
5.「欠格要件等」に該当しないこと
6.「社会保険への加入」に関する要件
参考 国土交通省 建設業の許可の要件
この6つの要件について、国土交通省や東京都の最新(2022年8月時点)の資料から以下のようにまとめます。
1.「経営業務の管理を適切に行うに足りる能力」要件 ⇒ 経営業務の管理責任者が常勤でいること
(1)常勤役員(個人である場合は本人またはその支配人)のうち一人が次のいずれかであること
○ 建設業に関し5年以上の経営業務の管理責任者としての経験を有する者であること。
○ 建設業に関し経営業務の管理責任者に準ずる地位にある者(経営業務を執行する権限の委任を受けた者に限る。)としての5年以上経営業務を管理した経験を有する者であること。
○ 建設業に関し経営業務の管理責任者に準ずる地位にある者としての6年以上経営業務の管理責任者を補助する業務に従事した経験を有する者であること。
【重要】以前は、経験年数は許可を得ようとする建設業の種類で区別がありましたが、今回から、建設業の経験として統一されました。
(2)下記のパターンもOKです。
2.「専任技術者」の要件⇒ 全ての営業所に、専任の技術者を置く必こと
建設工事に関する請負契約の適正な締結、履行を確保するためには、許可を受けようとする建設業に係る建設工事についての専門的知識が必要になります。
見積、入札、請負契約締結等の建設業に関する営業は各営業所で行われることから、営業所ごとに許可を受けようとする建設業に関して、一定の資格または経験を有した者(専任技術者)を設置することが必要です。
この専任技術者は、許可を受けようとする建設業が一般建設業であるか特定建設業であるか、また建設業の種類により、それぞれ必要な資格等が異なります。
また、専任技術者は「営業所ごとに専任の者を設置」することとされていますので、その営業所に常勤していることが必要です。
なお、経営業務の管理責任者と同様、専任技術者の設置も許可要件の1つであるため、許可を取得した後に専任技術者が不在となった場合は許可の取消しの対象等になるので、注意することが必要です。
(1)一般建設業の許可を受けようとする場合 (建築業法7条2号) (説明は東京都の例)
許可を受けようとする建設業に係る建設工事に関し、次に掲げるいずれかの要件に該当する者
イ | 学校教育法による高校(旧実業学校を含む。)指定学科卒業後5年以上、大学(高等専門学校・旧専門学校を含む。)指定学科卒業後3年以上の実務経験を有する者 |
ロ | 10年以上の実務経験を有する者(学歴・資格を問わない。) |
ハ | イ、ロと同等以上の知識・技術・技能を有すると認められたもの ①指定学科に関し、旧実業学校卒業程度検定に合格後5年以上又は旧専門学校卒業程度検定に合格後3年以上の実務経験を有する者 ②資格区分に該当する者 ③学校教育法による専修学校指定学科卒業後3年以上の実務経験を有する者で専門士又は高度専門士を称するもの ④学校教育法による専修学校指定学科卒業後5年以上の実務経験を申請に基づき認めた者 ⑤その他、国土交通大臣が個別の申請に基づき認めた者 |
※指定学科とは⇒国土交通省
※営業所専任技術者となりうる国家資格者等一覧⇒国土交通省
※複数業種に係る実務経験を有する者一覧へ⇒国土交通省
(2)特定建設業(※)の許可を得ようとする場合(建築業法15条2号)
※特定建設業の許可とは発注者から直接工事を請け負った際に、1件の建設工事(元請工事)につき合計額が4,000万円以上(建築一式工事の場合は6,000万円以上)の工事を下請に出す場合、取得が義務付けられている許可です。
許可を受けようとする建設業に係る建設工事に関し、次に掲げるいずれかの要件に該当する者
イ | 一定の資格区分に該当するもの |
ロ | 法第7条第2号イ・ロ・ハに該当し、かつ、元請として消費税を含み4,500万円以上の工事(平成6年12月28日前にあっては消費税を含み3,000万円、さらに、昭和59年10月1日前にあっては1,500万円以上)に関し、2年以上の指導監督的な実務経験を有する者 |
ハ | 国土交通大臣が、イ又はロに掲げる者と同等以上の能力を有すると認めた者 |
なお、指定建設業(※)の建設業許可は、上記のイまたはハが必要です。つまり、指定建設業では専任技術者は実務経験では認められず、一級の国家資格者、又は国交省大臣特別認定者であることが必要となります。
(※)①土木工事業②建築工事業③電気工事業④管工事業⑤鋼構造物工事業⑥ほ装工事業⑦造園工事業の7業種。
3.「財産的基礎等」に関する要件 東京都の例
建設業を営むには、資材の購入、労働者の確保、機材の購入、工事着工の準備資金等を必要とするため、財産的基礎(金銭的信用)を有していることを要件としています。
特定建設業に関しては、下請負人保護のため厳格な要件となっています。
一般建設業
(建設業法7条4号) |
次のいずれかに該当すること。 ① 自己資本が500万円以上あること。 ② 500万円以上の資金調達能力があること。 ③ 直前5年間東京都知事許可を受けて継続して営業した実績があり、かつ、現在東京都知事許可を有していること。 |
特定建設業
(建設業法15条3号) |
次の全ての要件に該当すること。 ① 欠損の額が資本金の20%を超えないこと。 ② 流動比率が75%以上であること。 ③ 資本金が2,000万円以上あること。 ④ 自己資本が4,000万円以上あること。 |
4.「誠実性」に関する要件
「誠実性」の要件がある理由は、注文生産で契約から完成までに長期間を要し、かつ契約が高額となる建設工事においては、取引が事業者の信用を前提として行われることになるため、請負契約の締結やその履行に関して不正や不誠実な行為を排除する仕組みが必要なためです。この要件については、一般建設業も、特定建設業も同じです。
(法第7条第3号および法第15条第1号) 法人・役員等、個人事業主、建設業法施行令第3条に規定する使用人(支配人・支店長・営業所長等)が請負契約に関して、不正又は不誠実な行為をするおそれが明らかな者ではないこと |
◎「不正な行為」⇒ 請負契約の締結又は履行の際の詐欺、脅迫等、法律に違反する行為
◎ 「不誠実な行為」⇒ 工事内容、工期等、請負契約に違反する行為
【例】建築士法、宅地建物取引業法等の規定により不正又は不誠実な行為を行ったことをもって免許等の取消処分を受け、その最終処分から5年を経過しない者は、不正又は不誠実な行為をするおそれが明らかな者として取り扱われます。(東京都)
5.「欠格要件等」に該当しないこと
欠格要件(主な欠格要件は以下のとおり)に該当するものは、許可を受けられません。(建設業法8条)
1 許可申請書若しくは添付書類中に重要な事項について虚偽の記載があり、又は重要な事実の記載が欠けているとき。 2 法人にあってはその法人の役員等、個人にあってはその本人、その他建設業法施行令第3条に規定する使用人(支配人、支店長、営業所長等)が、次の要件に該当しているとき。 ①破産手続開始の決定を受けて復権を得ない者 ②精神の機能の障害により建設業を適正に営むに当たって必要な認知、判断及び意思疎通を適切に行うことができない者(施行規則第8条の2) ③不正の手段で許可または認可を受けたこと等により、その許可を取り消されて5年を経過しない者 ④③に該当するとして聴聞の通知を受け取った後、廃業の届出をした場合、届出から5年を経過しない者 ⑤建設工事を適切に施工しなかったために公衆に危害を及ぼしたとき、又は危害を及ぼすおそれが大であるとき、あるいは請負契約に関し不誠実な行為をしたこと等により営業の停止を命ぜられ、その停止の期間が経過しない者 ⑥禁錮以上の刑に処せられその刑の執行を終わり、又はその刑の執行を受けることがなくなった日から5年を経過しない者 ⑦建設業法、建築基準法、労働基準法等の建設工事に関する法令のうち政令で定めるもの、若しくは暴力団員による不当な行為の防止等に関する法律の規定に違反し、又は刑法等の一定の罪を犯し罰金刑に処せられ、刑の執行を受けることがなくなった日から5年を経過しない者 ⑧暴力団員による不当な行為の防止等に関する法律第2条第6号に規定する暴力団員又は同号に規定する暴力団員でなくなった日から5年を経過しない者(⑨において「暴力団員等」という) ⑨暴力団員等がその事業活動を支配する者 |
対象者(法人は、役員全員です)は、全役員欠格要件に該当しないことに関する誓約書、登記されていないことの証明書(または契約の締結または履行に必要な認知、判断および意思疎通を適切に行うことができる能力がある旨の医師の診断書)等の書類により欠格要件に該当しないことを明らかにします。
6.適正な社会保険への加入
社会保険とは、健康保険、厚生年金保険、雇用保険のことです。
〇健康保険、厚生年金保険・・・適用事業所に該当する全ての営業所について、その旨を届け出ていること
〇雇用保険・・・適用事業の事業所に該当する全ての営業所について、その旨を届け出ていること
が求められます。
出所 国土交通省 建設業法施行規則等の一部を改正する省令について