BCP |「8つの質問」と「補助ツール」で作る方法 / 杉並区の防災士・行政書士が解説

何となく面倒で、なかなかBCPの作成に着手できない。どのような観点で作ればいいのかわからないという方も多いかと思います。

万一の災害時には、予め行動計画を決めておかないと、組織は思考停止に陥るリスクがあります。災害が発生した時のご自分の周囲の状況を予めイメージしているかどうかで、被害の軽減や復旧スピードに差が出ます。BCPも簡単なものから作成し、それを徐々に見直し肉付けしていけばいいと思います。

大災害の発生が1か月後に来ると想定し、まずは以下の8つの質問への回答を考えたらどうでしょうか。それにより、BCPの基本的な骨格は、目処が立つのではないかと思います。回答を文章化すれば、立派なBCPの第一歩です。

時間を掛けずにBCPを作る方法の例

「天災は忘れた頃にやってくる」と言われますが、地震ハザードステーションで見ると、例えば東京都ではほとんどの場所で、30年内に100%の確率で震度5弱以上が来る予測となっていますので、家庭も職場もそのときのための計画を立てておく必要性は高いと言えます。

そこで、まだBCPができていない、会社の担当者または個人事業主の方に、比較的に手軽に取り組めるBCP作成方法をご紹介します。

【ステップ1】お手元の紙に、下に述べる8つの質問の回答を記載してみる。(おおよそ10~20分)

 ⇒ これで、BCPの8つの論点が具体的に記載できました。この作業の目的は、具体的な質問に回答することでBCP脳を作ることです。

【ステップ2】ステップ1で書いたメモの記載を、解説を読んで修正・補記する。(およそ10~20分)

 ⇒ とくに、資料を参照しなくても、思いついたことをざっと書いてしまってください。ステップ1の作業を補完することが目的です。 

【ステップ3】中小企業庁の「事業継続力強化計画」の下書き用シートをBCPのテンプレートとして利用し、自社版BCPを作ってしまう。

⇒ 中小企業庁の「事業継続力強化計画」のサイトでは、電子申請用の下書き用のワードファイルと、マニュアルが公開されています。これを利用しない手はありません。最終的に、電子申請するしないは別として、下書きファイルを活用して、さっとBCPを作りましょう。

【下書き用ワードファイル】

事業継続力強化計画の下書きシート 杉並区 | 行政書士中村光男事務所

※ 中小企業庁の「事業継続力強化計画ポータルサイト」https://kyoujinnka.smrj.go.jp/guidance/application.html から「申請用計画作成補助ツール」をダウンロード可能。

【マニュアル】

BCPマニュアル 杉並区 | 行政書士中村光男事務所

https://www.chusho.meti.go.jp/keiei/antei/bousai/keizokuryoku.htm#portalsite

左から2番目のマニュアルがいいと思います。

ステップ1   8つの質問に答える

Q1 BCPとは何かを自分の言葉で他人に簡潔に説明できますか?

Q2 自社の建物の耐震性能を知っていますか?

Q3 災害で公共交通機関が停止したときに出社可能な社員数を把握していますか?

Q4 災害で音声電話が使えない場合の緊急連絡手段を決めていますか?

Q5 被災した際に、連絡をするべき社外関係者リスト化していますか。

Q6 職場で災害時の負傷者発生防止策が十分に取られていますか?

Q7 1か月間事業が中断した場合の自社の損害額を把握していますか?

Q8 事業継続に必要な資材(機械、データ、建物等)の復旧プランがありますか?

ステップ2 下記の解説を参考に、上記メモを補足

Q1 BCPとは何かを自分の言葉で他人に簡潔に説明できますか?

⇒ 簡単にいえば、BCPは災害発生時の事業計画です。平時の事業計画と異なるのは、ヒト・モノ・カネという経営資源が、災害によって限定されるからです。そのため、限定された資源と人材で、重要な事業に絞って事業継続を行うという点が、平時と異なります。

中小企業庁はBCPを次のように説明しています。 中小企業BCP策定運用指針より

BCP(事業継続計画)とは、企業が自然災害、大火災、テロ攻撃などの緊急事態に遭遇した場合において、事業資産の損害を最小限にとどめつつ、中核となる事業の継続あるいは早期復旧を可能とするために、平常時に行うべき活動や緊急時における事業継続のための方法、手段などを取り決めておく計画のことです。

企業が大地震などの緊急事態に遭遇すると操業率が大きく落ちます(下図参照)。何も備えを行っていない企業では、事業の復旧が大きく遅れて事業の縮小を余儀なくされたり、復旧できずに廃業に追い込まれたりするおそれがあります。一方、BCP導入している企業は、緊急時でも中核事業を維持・早期復旧することができ、その後、操業率を100%に戻したり、さらには市場の信頼を得て事業が拡大したりすることも期待できます。

Q2 自社の建物の耐震性能を知っていますか?

 ⇒ 1981年の新耐震基準以降に建設された建物であれば、震度7程度でも倒壊しないと考えられています。それ以前の建物であれば、建築士等に相談の上、耐震補強を行っておく必要があると思います。

Q3 災害で公共交通機関が停止したときに出社可能な社員数を把握していますか?

 ⇒ 30年間で70%以上の確率で発生すると考えられている首都圏直下型地震の想定では、数日間は、倒壊した建物や渋滞で道路はほぼ使えず、鉄道・地下鉄は1週間後に少し動き出すというシナリオです。このとき、従業員がどの程度出社可能かを考えておく必要があります。

Q4 災害で音声電話が使えない場合の緊急連絡手段を決めていますか?

 ⇒ メーリングリストやグループメールを作成し、定期的に安否確認の練習をしておくのが良いと思います。

 (参考 体験談やっときゃよかったメーリングリスト ~仲間の安否確認に四苦八苦~

出張先の東京で地震のニュースを聞き、とんぼ返りで福岡に戻ってきたのは、午後4時ぐらいでした。私は青年会議所の理事長という立場にありましたので、パソコンや携帯メールを使って、メンバーの会社の状況がどうなのか、けが人はいないのか、家族はどうなのかということを専務理事と手分けして片っぱしからきいていきました。とにかく、メンバー全員の情報を取りたいと思ったのです。

しかし、このメンバーの安否確認というのは、困難を極めました。300名のメンバーひとりひとりに連絡をとることは容易ではありませんでした。

そのとき、情報を一斉に配信する手だてをもっと早く講じておけば良かったと痛切に感じましたので、地震のあと、さっそく、メーリングリストの導入を検討しました。何といっても災害時は、情報共有が一番ですからね。

  (内閣府 1日前プロジェクト

Q5 被災した際に、連絡をするべき社外関係者リスト化していますか。

 ⇒ 関係先をリストアップしておくだけでなく、地震の際に使用可能な固定電話の確保についても重要です。IP電話は停電時には使えないことが多いようです。対策として、電源が不要なアナログ回線電話機(数千円)を購入し、ビジネスプリンター等の複合機のファックス回線に接続して、通話テストをしておくなどしておくとよいと思います。ちなみに、以前勤務していた会社では、地震発生で電話不通の際は、FAX回線にアナログ電話を接続して、関係先と連絡をとるルールとしていました。

停電の際の固定電話サービスの利用について(総務省)

Q6 職場で災害時の負傷者発生防止策が十分に取られていますか?

⇒ 建物は地震で倒壊しなくても、オフィス内は、コピー機やキャビネなどの重量物が従業員をケガさせる可能性もあります。配置や転倒防止策を十分にとっておく必要があります。

Q7 1か月間事業が中断した場合の自社の損害額を把握していますか?

⇒ 常日頃から、1か月売り上げがなくても資金繰りがつくか考え、準備しておく必要があります。手元資金を厚くすることや、金融機関のコミットメントラインを購入しておくことなどが考えられます。

Q8 事業継続に必要な資材(機械、データ、建物等)の復旧プランがありますか?

⇒ データ保管のクラウド化、同業者と設備の共同利用や助け合いを話あっておく、大体作業所の見当をつけておくことなどが考えられます。

ステップ3 事業継続力強化計画の電子申請の下書きをしてみる

マニュアルと下書き用ファイルは、上に書いたとおりです。

どうぞ、チャレンジしてみてください。なお、当事務所でも、BCP作成のアドバイスは可能ですので、お気軽にお問合せください。

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