2022年9月9日、国土交通省からコロナ対策で行っていた道路占有許可の緩和期限を来年3月末まで延長するというリリースがありました。このリリースの意味がより深く理解できるように、この機会に、道路占有許可と道路使用許可について基本的なことをまとめてしました。
1. 新型コロナ対策での道路占有許可の緩和措置期限の延長について
欧米でよく見かけるような、レストランの椅子やテーブルを道路にかかるように設置する際は、道路管理者による「道路占用許可」及び警察による「道路使用許可」が必要です。
ただし、国土交通省では、新型コロナウイルス感染症の影響を受ける飲食店を支援するための緊急措置としてテイクアウトやテラス営業などのための道路占用許可基準の緩和措置(=いわゆる無余地性の基準等について弾力的な判断を行う)をとっています。その緩和措置の占用期間は、2022年9月30 日までとされていましたが、このたび国土交通省からニュースリリースがあり、占有期間が2023年3月31日まで延長されることになりました。
また、本特例措置を利用し、路上に飲食施設等を設置しようとする際は、道路占用許可基準及び道路使用許可基準の確認事項をチェックの上、これらの確認事項を満たす場合、申請者は道路管理者及び都道府県警察へ事前相談を行うことなく、道路占用許可申請書及び道路使用許可申請書を、国道事務所(出張所)又は警察署のどちらか一方の窓口に提出できるとされています(窓口の一元化)。
参考 国土交通省「新型コロナウイルス感染症に対応するための沿道飲食店等の路上利用に伴う道路占用について」
2.道路の使用許可ー道路交通法(警察の管轄)
一時的であると継続的であるとを問わず、道路の本来の用途に即さない道路の特別の使用行為で、交通の妨害となり、又は交通に危険を生じさせるおそれのあるものは、一般的に禁止されています(道路交通法第76条=絶対的禁止)。
これに対し、道路工事のように、それ自体は社会的な価値を有するものは、一定の要件を備えていれば、警察署長の許可によって、道路使用ができるようなります。これを、道路の使用許可といいます。
道路使用許可の対象となる行為は具体的には、道路交通法第77条第1項で4つの類型が定められています。
参考 警察庁ホームページ
4号許可ー東京都の場合
東京都の場合、管轄の警察署の許可が必要な「4号」の行為は、東京都道路交通規則18条で以下のように記載されています。
(1) 道路において、祭礼行事、記念行事、式典、競技会、仮装行列、パレード、街頭行進その他これらに類する催し物をすること。
(2) 道路において、旗、のぼり、看板、あんどんその他これらに類するものを持ち、若しくは楽器を鳴らし、又は特異な装いをして、広告又は宣伝をすること。
(3) 車両等に広告又は宣伝のため著しく人目をひくように、装飾その他の装い(車両等を動物、商品その他のものにかたちどることを含む。)をし、又は文字、絵等を書いて通行すること。
(4) 道路において、ロケーション、撮影会その他これらに類する行為をすること。
(5) 道路において、拡声器、ラジオ、テレビ、映写機等を備え付けた車両等により、放送又は映写をすること。
(6) 演説、演芸、奏楽、放送、映写その他の方法により、道路に人寄せをすること。
(7) 道路において、消防、水防、避難、救護その他の訓練を行なうこと。
(8) 交通の頻繁な道路において、寄附を募集し、若しくは署名を求め、又は物を販売若しくは交付すること。
(9) 道路において、ロボットの移動を伴う実証実験、人の移動の用に供するロボットの実証実験又は自動車から遠隔に存在する運転者が電気通信技術を利用して当該自動車の運転操作を行うことができる自動運転技術を用いて自動車を走行させる実証実験をすること。
※道路使用許可は、その行為の継続性は問題としてはいません。一時的に道路上で行うものであっても、継続的な行為でも、どちらも対象となります。
【道路使用の許可基準】
上記の道路使用が認められるのは、以下のいずれかの条件を満たすときです。
道路使用許可が必要な行為を行う場所を管轄する警察署長は、道路交通法第77条第2項の規定に 基づき①から③のいずれかに該当する場合は許可をしなければなりません。
- 現に交通の妨害となるおそれがないと認められるとき
- 許可に付された条件に従って行われることにより交通の妨害となるおそれがなくなると認められるとき
- 現に交通の妨害となるおそれはあるが公益上又は社会の慣習上やむを得ないものであると認められるとき
【道路の使用許可が必要なのに取得しなかった場合・条件違反の場合】
道路交通法第119条第1項12-4号,同13号の規定により、3月以下の懲役または5万円以下の罰金の対象となります。
【道路使用許可手続の簡素化・弾力化に向けた取組】
警察庁では、地域活性化等に資するという社会的な意義があり、地域住民、道路利用者等の合意に基づいて行われるイベント等については、道路使用許可手続が円滑に行われるよう配意した運用を実施しています。
3.道路の占有許可ー道路法(道路管理者の管轄)
道路上に電柱を設置する場合など、道路に一定の施設を設置し、継続して道路を使用することを「道路の占用」といいます。この道路の占用は地上に施設を設置する場合だけでなく、電気・電話・ガス・上下水道などの管路を道路の地下に埋設する場合や、道路の上空に看板を突き出して設置する場合なども含まれます。
「道路の占用」をするためには、道路を管理している「道路管理者」の許可を受ける必要があります。許可を得ずに道路占用をすると、物件の撤去や道路の修復、罰金の支払い等を命令される場合があります。
【道路の占有を行うことのできる物件】
道路管理者の許可があれば、道路占有ができる物件は、法令等で決まっています。
【道路占有許可の申請先】
道路は、国道(国土交通大臣又は都道府県が管理)、都道府県道(都道府県が管理するもの)、市区町村道(市区町村が管理)、高速自動車国道(国土交通大臣が管理)に分れています。道路占有許可は、その道路の管理者に申請します。
国が管理している指定区間の国道については、当該国道を管理している国道事務所の「事務所若しくは出張所」から「道路占用許可申請書」の用紙を受けとり、必要事項を記入のうえ「出張所」に占用許可申請することになります。
占有許可を取りたい道路の管理者が誰かは、各自治体のHPで検索可能です。よくわからない時は、各自治体の担当課に電話で問い合わせれば、確認できると思います。
例 東京都の道路検索⇒23区内都道検索・閲覧システム
【道路占用の期間について】
道路占用の許可には、占用することのできる期間も含まれていますが、(道路法第32条第2項)必ずしも、申請者が希望する占用期間をどおりにはなり ません。 道路法では、占用物件毎に次のように占用期間の最高限度を定め、その範囲内で期間を決定することとしています。(道路法施行令第9条)
〇企業占用物件(例:上下水道、鉄道、電気、電話、ガスなど)は、10年以内
〇その他の物件(一般占用)については、5年以内
【占有料】
道路の占用の許可は、一般公衆の自由な通行・使用を目的とする道路を、この一般用に著しい支障を与えない場合に限って、特定の者に排他独占的に使用する権利を与えるものです。
占用料の徴収については、道路法で規定されています。この占用料徴収権は、道路管理権に基づくものです。(道路法第39条)
【「道路占用許可」と「道路使用許可」の申請の一本化】
「道路占用許可」と「道路使用許可」の申請の提出はどちらか一方の窓口を経由して行うことができるとされています。(道路法第32条第4項、道路交通法第78条第2項)
【道路占有許可が必要なのに許可をとらなかった場合】
道路占用許可が必要であるにもかかわらず占用許可を取得しなかった場合は、道路法第102条により、1年以下の懲役又は50万円以下の罰金が科せられます。(2022.9.13現在)
4. 最後に
道路の申請書・添付書類・占有料については、各道路管理者ごとに定めがあります。また、どのような場合にどのような許可を誰からとればいいのかなど、面倒な点が多いのも事実です。さらには、許可手続きに時間が取れないということもあるかと思います。行政書士は、道路の使用と占有許可の申請代行が可能ですので、ぜひご相談ください。