今回は「生産緑地」を相続した場合の手続きや注意点についてお話しします。生産緑地は特有のルールが多いため、相続人にとっては悩みの種になりがちです。しかし、適切な対応をすれば、スムーズに手続きを進めることができます。
生産緑地とは?
生産緑地は、市街化区域内にありながら農地として保全される土地のことです。
市街化区域内の農地で、良好な生活環境の確保に効用があり、公共施設等の敷地として適している農地を指定するものです。
良好な都市環境の形成のため、三大都市圏の特定市の市街化区域内の農地等を、宅地化の促進を図る農地等( いわゆる宅地化農地) と今後とも保全する農地等とに二分し、後者については、生産緑地法に基づき生産緑地地区に指定し、都市農地の計画的な保全を図っています。
◆東京都の生産緑地一覧◆
指定によるメリット
◆固定資産税が農地課税(生産緑地以外は宅地並み課税)
◆相続税の納税猶予制度が適用(生産緑地以外は適用なし)
生産緑地の買取り申出
生産緑地地区に指定されると30年間の営農義務が生じます。その間に、主たる従事者の死亡・身体故障が生じた場合には、生産緑地の所有者は区市町村長に対して買取り申出することが可能です。また、都市計画の告示から30年経過後にはいつでも買取り申出が可能になります。
指定による行為の制限
生産緑地地区内では、非常災害等の例外を除き、次の行為を行う場合、区市町村長の許可が必要になります。
・建築物その他の工作物の新築、改築又は増築
・宅地の造成、土石の採取その他の土地の形質の変更
・水面の埋立て又は干拓
こうした特性から、相続時には特有の手続きが発生します。
生産緑地の相続で起こりうる問題
生産緑地を相続したばあいの選択肢は以下の3つです。
1.生産緑地の指定を継続する
2.生産緑地の指定を解除する
3.生産緑地の指定を一部だけ解除する(市町村によっては認められないことがあります。)
指定の継続と解除のメリデメは以下のとおりです。
1.解除の場合
生産緑地指定が解除されると、生産緑地法による制限も解除されますが、固定資産税や相続税等の優遇は適用できなくなるため、税負担が重くなります。固定資産税が大幅に増加する可能性があります。
2.継続の場合
生産緑地の指定を継続すれば、固定資産税や相続税等の優遇を受けられますが、生産緑地法による行為制限などの義務を課されることになります。
さらに、
3.売却や転用の制限
生産緑地は原則として農業以外の用途には使えないため、自由に売却や転用ができません。
資料 国土交通省 生産緑地制度の概要(国交省資料)
東京都都市整備局 生産緑地地区