農地区分と農地転用

国の農地転用規制には、①農業上の土地利用のゾーニングを行う農業振興地域制度と②個別の農地転用を規制する農地転用許可制度があります。

農地は、農業法上の区分であり、都市計画法の区分とはクロスオーバーするので混乱します。このコラムでは、農地区分と農地転用についてまとめてみました。

農業振興地域制度とは

「農用地区域」(青地)と「農用地区域の指定を受けない区域」(白地)

農業振興地域制度は、農業振興地域の整備に関する法律(以下、農振法)に基づき、農業の振興を総合的に図るべき地域を明らかにし、土地の有効利用と農業の近代化のための施策を総合的かつ計画的に推進することで、農業の健全な発展および優良農地の保全等を目的とする制度です。

都道府県が農業振興地域整備基本方針を策定し、今後長期にわたり総合的に農業振興を図るべき地域として農業振興地域を指定します。

これを受けて、市町村は農業振興地域整備計画(以下、農振計画)を策定したうえで、優良農地として確保および保全が必要な農地を農業振興地域内の農用地区域(以下、青地)に指定しています。

なお農業振興地域内の青地ではない地域を、農振白地地域(以下、白地)と呼びます。

<ポイント1>
農業振興地域(農振地域)の中に「農用地区域」(青地)と「農用地区域の指定を受けない区域」(白地)に分かれる。

青地については、原則として農業以外の用途に利用することはできません。

農業用振興地域制度 青地、白地 杉並区 | 行政書士中村光男事務所

◆農用地区域からの除外
 農用地区域内では農業目的以外の土地利用が制限されていますので、農用地区域内の土地を農業以外の目的で利用しようとするときは、農用地区域からの除外をすることが必要です。

【除外の手続き】

除外の手続きは次のようになります。

1 計画者が市町村に農用地区域除外の申し出をする

2 市町村はその申し出を受けて、農業振興地域整備計画(農用地利用計画)の変更もやむを得ないと判断した場合には変更の手続きを進める

3 知事が市町村の農業振興地域整備計画(農用地利用計画)変更案に同意する

4 農地法の農地転用許可や都市計画法の開発許可が必要な場合、計画者は利用しようとする土地が農用地区域から除外された後に、これらの許可を受ける。

除外の基本的な考え方
各自治体によって異なりますが、基本的には、農用地区域内の土地を農用地区域から除外するには、法令基準(※)及び県の同意基準を全て満たし、かつ市町村が地域農業の振興に支障がないものと認めた場合に限られます。

※農振法第13条第2項等
①除外に係る土地を農用地等以外の用途に利用することが必要かつ適当であって、農用地区域以外に代替する土地がないこと。
②地域計画の達成に支障を及ぼすおそれがないと認められること。
③農用地の集団化、農作業の効率化その他農業上の効率的・総合的な利用に支障を及ぼすおそれがないこと。
④効率的・安定的な農業経営を営む担い手に対する農用地の利用の集積に支障を及ぼすおそれがないこと。
⑤農用地等の保全又は利用上必要な施設の機能に支障を及ぼすおそれがないこと。
⑥土地改良事業等の工事が完了した年度の翌年度から8年が経過していること。

<ポイント2>

農用地区域内の土地は、原則として農地以外に利用することができません。やむを得ず、農用地等以外の用途(住宅の建築等)に利用したい場合には、法第13条第2項の6要件を全て満たし、農業振興に支障がないと判断される場合に限って、除外することができます。

農地の農振法上の区分の調べ方

今まで述べてきたように、農地振興法に基づく区分が青地か白地かは、土地活用の前提として重要な事項です。農地区分の調べ方は、各市町村の農林課、農政課、農林業振興課などの担当部門で確認できます。

自治体によっては、青地の一覧を開示しているところもあります。窓口に出向くほか、電話やFAXで確認できる場合もあります。確認する際は、農地の字名と地番が必要になります。

また、「eMAFF農地ナビ」(https://map.maff.go.jp/)で調べることもできます。これは、市町村および農業委員会(以下、「農業委員会等」という。)が整備している農地台帳および農地に関する地図について、農地法に基づき農地情報をインターネット上で公表するサイトです。(管轄の農業委員会が農地の情報等を非公開に設定している場合、それに該当する情報はeMAFF農地ナビには表示されません。農地情報の公開・非公開の詳細については、管轄の農業委員会にお問い合わせください。)  参考 https://map.maff.go.jp/QA

農地振興法上の区分調べ方 杉並区 | 行政書士中村光男事務所

↑eMAFF表示例(住所を入力して、色分け項目を「農振法区分」とした場合)

農地転用許可制度とは

農地転用とは農地を住宅・駐車場・導水路・学校・工場・病院・太陽光発電所など、農地以外の用地に転換することです。農地は、食料確保のため需要な土地ですから、農業上の利用に支障がない農地にのみ転用を認める方針となっています。

市街化区域内の農地を農地以外に利用したい場合には、あらかじめ農業委員会に届出が必要です。届出は随時受付をしております。なお、受理証が交付されるまでには、通常は受付日から5日程度必要になります。

市街化調整区域内の農地を農地以外に利用したい場合には、県知事の許可が必要で、いろいろな制約があります。

農地法の許可には、農地法に記載されている条文番号によって「3条許可」、「4条許可」、「5条許可」があります。

この前提として、農地が5つに区分されています。

<農地とは>

農地法2条で「この法律で「農地」とは、耕作の目的に供される土地いい、「採草放牧地」とは、農地以外の土地で、主として耕作又は養畜の事業のための採草又は家畜の放牧の目的に供されるものをいう。」となっています。

農地法にいう農地または採草放牧地の判断は、現況(現況主義)によります。土地の位置、環境、利用の経緯、現況等を総合的に考慮して、農地であるか否かを判断されます。

土地が現に耕作の用に供されている限り、土地登記簿の地目が宅地、山林等であっても、農地であるといってよいことになります。ただし、宅地の一部を耕作している家庭菜園等は、耕作されていても農地ではありません。

<農地の5区分>

農地は農地の位置、自然条件、都市環境等により5種類の農地区分に分けられます。それぞれの農地区分によって農地転用許可方針は異なってきます。

 

農地の区分 概要 農地転用許可方針
農用地区域 農振法に基づき市町村が定める農業振興地域整備計画において、農振農用地区域とされた区域内の農地。(青地) 原則不許可。(転用する場合、一時的な利用等を除き、原則として農振農用地から外す手続が必要となります。)
甲種農地 市街化調整区域内にある特に良好な営農条件を備えている農地。

  • 集団的(おおむね10ヘクタール以上)に存在する農地で、高性能な農業機械による営農に適している。
  • 農業公共投資(土地改良事業等)から8年以内である。
原則不許可。(例外許可がある。)
第1種農地 良好な営農条件を備えている農地。

  • 集団的(おおむね10ヘクタール以上)に存在する。
  • 農業公共投資(土地改良事業等)の対象である。
  • 高い生産力が認められる。
原則不許可。(例外許可がある。)
第2種農地 「市街化の区域内又は市街地化の傾向が著しい区域内にある農地」に近接する区域その他市街地化が見込まれる区域内にある農地で、農用地区域内にある農地以外の甲種、第1種農地及び第3種農地のいずれの要件にも該当しない農地。

  • 街路が普遍的に配置されている地域内にある。
  • 市街化の傾向が著しい区域に近接する区域内になる農地の区域で、その規模が10ヘクタール未満である。
  • 駅、市町村役場等の公共施設から近距離(500メートル以内)にある地域内にある。
申請に係る農地に代えて周辺の他の土地を供することにより、当該申請に係る事業の目的を達成できる(代替地がある)と認められる場合には、原則として許可することはできない。
第3種農地 市街地の区域内又は市街地化の傾向が著しい区域内にある農地。

  • 上水道管、下水道管、ガス管のうち2つ以上が埋設された道路の沿道の区域であって、おおむね500メートル以内に2つ以上の教育施設、医療施設等の公共公益施設がある。
  • 駅、市町村役場等の公共施設から至近距離(300メートル以内)にある地域内にある。
  • 都市計画法上の用途地域が定められている区域内にある。
  • 土地区画整理事業の施行区域にある。
  • 街区の面積に占める宅地化率40パーセント以上の区画内にある。
  • 住宅や事業施設、公共施設等が連たんしている区域内にある。
原則許可。

都市計画法と農地の関係

農地の定義は、農地法による「耕作の目的に供される土地」(現況主義)ですから、登記や都市計画区分とは関係なく、存在し得るものです。

農地の区分は農地法に基づくものです。

極端な話、都市計画法による市街化調整区域のみならず、市街化区域にも農地は存在する可能性があります。

しかし、市街化区域の農地は、市街化区域内にある農地を転用する場合は、計画的な市街化を図り市街化を促進するという観点から、農業委員会に届出を行うことですみますので、農地転用のハードルは低いものとなります。

都市計画 杉並区 | 行政書士中村光男事務所

↑「農地」は都市計画区域内にも存在します(このイメージ図の他、非線引き区域もあります。)。

農業振興地域制度と農地転用許可制度の関係

農地振興地域制度と農地転用許可制度の概要 杉並区 | 行政書士中村光男事務所

 

転用の種類

農地転用(農地を農地以外のものにする)には、農地法に基づく許可が必要です。
なお、市街化区域内の農地を転用する場合には、あらかじめ農業委員会に届け出ることにより、許可が不要になります。

許可の種類 内  容
3条許可 農地を農地として利用するために他人に売買、贈与、賃貸借等する場合
4条許可 自分の所有する農地を自分で使うために農地以外に転用する場合

例)自己住宅,貸住宅,道路,駐車場,植林または自己の事業に必要な資材置場等に使用する場合。

5条許可 農地を他人が農地以外として利用するために売買、贈与、賃貸借等する場合

例)転用に併せて権利の移転,設定を行う場合で,一般住宅,貸住宅,建売住宅の建設,分譲宅地の造成,道路,仮植地,資材置場等に使用するため農地を買い,借り,または贈与を受ける場合。

転用する農地の区域

転用する農地が都市計画法に基づく(ア)市街化調整区域(イ)市街化区域,或いは(ウ)都市計画区域外に所在するかによって,転用手続が次のとおり分かれます。

(ア)市街化区域内の転用 市街化区域内は優先的かつ計画的に市街化をはかる地域であり,転用しようとするものは,事前に農地転用届出書を提出し,受理通知書を受領したあとでなければ工事に着手することはできません。
(イ)市街化調整区域内の転用 この区域は,市街化を抑制し,農業を発展させるため農地を保全確保する地域であり,都市計画法と農地法により転用を制約されています。農地転用をしようとする者は,事前に知事の許可(その面積が4haを超える場合は農林水産大臣の許可)が必要です。
(ウ)都市計画区域外の転用 都市計画法の規制は受けませんが,転用については市街化調整区域内の取り扱いに準じます。

農地転用上の留意事項

農地の転用にあたっては,農地法以外の各法令(下記の例参照)が関連してきますので,検討しておく必要があります。

例)「農業振興地域の整備に関する法律」「都市計画法」「建築基準法」「国土利用計画法」「砂利採取法」「採石法」「宅地造成規制法」「道路法」「河川法」「宗教法人法」「自然公園法」「廃棄物の処理及び清掃に関する法律」「墓地埋葬等に関する法律」「騒音規制法」「消防法」など

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