詐害行為取消権と相続

詐害行為取消権とは、債務者が、債権者を害することをわかったうえで、自己の財産を売却するなどして積極的に減少させた場合に、債権者が裁判でその行為を取り消して財産を返還させて、債権者のための責任財産の保全を図るための制度です。

民法424条以下に規定があります。https://hourei.net/law/129AC0000000089

詐害行為取消権
第424条 1項
債権者は、債務者が債権者を害することを知ってした行為の取消しを裁判所に請求することができる。ただし、その行為によって利益を受けた者(以下この款において「受益者」という。)がその行為の時において債権者を害することを知らなかったときは、この限りでない。

相続との関係でも、相続人の行動によって債権者への弁済が十分にできなくなった時に、債権者に詐害行為取消権が認められる場合があります。

遺産分割協議において、相続人の一人が、法定相続分よりはるかに少ない財産を相続する遺産分割協議を成立させた場合に、「遺産は相続によって、共同相続人の共有となるの、遺産分割で自分の財産を積極的に減少させた場合は、詐害行為取消の対象になりえる」という判例があります。

一方で、相続放棄は、「最初から相続人でないことになるので、自分の財産を積極的に減少させていない」という理由で、詐害行為取消の対象にならないという判例があります。

借金を抱えた方の相続放棄は可能か
 多くの借金がある方の親が亡くなられた場合、他の相続人に遺産を相続してもらって、自分は相続放棄すると、遺産相続によって借金返済をして欲しいと思っている債権者たちから見れば、あてが外れてしまいますので、「相続放棄」を詐害行為取消の対象とできるのでしょうか?

このケースでは、上記の判例のように、相続放棄は詐害行為取消の対象にならないとされています。借金があるからと言って、相続を強制されることはないということです。