意匠権でスタートアップを支援!特許庁の新施策と行政書士の役割

スタートアップが独創的な技術・アイディアをもとにビジネスを急成長させていくためには、戦略的な知的財産保護がカギになります。そこで、スタートアップや個人事業者が直面する資金調達の壁を、特許庁が新たな施策で支援するというニュース(注)が流れました。

それによれば、2025年度から、意匠権(製品のデザインなどの知的財産権)の審査期間を短縮し、スタートアップや個人事業者を優先審査の対象に加える予定とのことです。この動きは、信用リスクが高いとされる新興企業の価値向上を目指し、資金調達を後押しするものです。

今回はこの施策の概要と、意匠権を含む、特許・実用新案・商標などの知的財産権(産業財産権)について行政書士が提供できるサポートについて解説します。
(注)https://www.nikkei.com/article/DGXZQOUA2659X0W4A221C2000000/

意匠権とは?

意匠権は、独創的な製品の形状や模様、色彩のデザインを保護する権利です。2020年4月の改正意匠法により、画像や建物の内装も保護対象に加わり、より幅広い分野で活用されています。これにより、デザインを重要な資産とする企業が増えています。

意匠権による保護を受けるためには、保護を受けようとする意匠について、特許庁に意匠登録出願をし、意匠登録を受けなければなりません。スタートアップが創作した意匠であっても、出願前に公開すると意匠が認められなくなることもあります。

杉並区 | 行政書士中村光男事務所 意匠権

意匠権の効力は、登録された意匠と同一又は類似の範囲まで及びますので、第三者によるデザインの模倣品や類似品の販売等を排除することができます。

物等のデザインは著作権で保護される場合もありますが、著作権は原則として絵画などの純粋美術が著作物として保護されるのに対し、意匠権は工業上利用できる物等のデザインが保護の対象となります。

特許庁の新施策:スタートアップ支援

通常、意匠権の審査には約6~8カ月がかかりますが、特許庁は模倣品対策などの緊急性の高い案件を優先的に処理する「早期審査」制度を運用しています。この制度では、審査期間を約3カ月以内に短縮可能です。

特許庁への早期審査申請費用はかかりません。代理人に早期審査請求を依頼した場合には、代理人費用が掛かります。

新聞報道によると、特許庁は2025年度からは、以下の条件を満たすスタートアップや個人事業者も早期審査の対象に加える方針です:

・設立後10年以内で、従業員数が20人以下の企業
・大企業の傘下に入っていない独立企業
・事業開始後10年以内の個人事業者

この変更により、特許庁は知的財産の早期取得を通じて、新興企業の成長と資金調達を支援する目論見です。

スタートアップと意匠権の重要性スタートアップが保有する意匠権は、投資家の評価を高める大きな武器になるでしょう。特許庁の調査では、ベンチャーキャピタルの85.3%が投資判断時に知的財産の有無を重視すると回答しています。たとえば、電動スクーターのデザインや検索用画像の意匠権を取得した事例は、企業の競争力と成長性を示す成功例です。

意匠権と行政書士の活用

意匠権の登録は、弁理士によって代行可能です。では行政書士は意匠権のような「知的財産」全般にどのような役割を果たすのでしょうか?

契約業務

他者が権利を持っている知的財産を利用するには、後々のトラブル予防のために契約や覚書を締結します。行政書士は、意匠権をはじめ、著作権、特許権、実用新案権等の「知的財産の譲渡契約」や「実施許諾契約(ライセンス契約)」における代理人としての契約書作成、秘密保持契約書の作成、権利関係の調査、コンサルティング契約書作成およびコンサルティング業務を行います。

譲渡による移転登録申請

譲渡契約によって、意匠権を第三者に移転したときは、移転の事実を特許庁に登録しないと効力が発生しません。意匠権のほか、特許権、実用新案権、意匠権、商標権についても同様です。行政書士は、これらの権利移転について特許庁への移転登録申請の代理手続を行っています。

 専用実施権の登録申請

「実施許諾契約(ライセンス契約)」における実施権のうち、制限なく業として特許発明を独占排他的に実施することができる「専用実施権」は、特許庁の原簿に登録しなければ効力を生じません。行政書士は、特許庁への実施権の登録申請の代理手続を行います。(なお、「通常実施権」は、登録不要です。*)

*2012年4月1日施行の改正特許法によって、特許権、実用新案権、意匠権に係る通常実施権について、新たに当然対抗制度が導入されました。それ以前は、特許原簿等への通常実施権の登録が第三者対抗要件でしたが、当然対抗制度により通常実施権の登録をしなくても第三者に対抗できるようになりました。

知的財産関連業務の行政書士報酬目安 (除く、消費税・特許庁の登録免許税)

案件の難易度によって、個別の報酬は異なりますが、概ねの目安はこんな感じです。

・契約      3万円~
 ・移転登録申請  5万円~
 ・専用実施権の設定登録申請 5万円~

参考サイト
・特許庁 制度・手続き  スタートアップ向け情報
・日本行政書士連合会 知的資産・知的財産
・独立行政法人 工業所有権情報・研修館知っておきたい知的財産契約の基礎知識」  https://www.inpit.go.jp/content/100874703.pdf

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