経営者の相続・事業承継 杉並区 | 行政書士中村光男事務所 杉並・練馬・中野・武蔵野市・新宿区・小金井市・小平市

親が中小企業を経営していた場合、「会社はどうなるのか」「子どもが引き継げるのか」という疑問を持つ方は少なくありません。この問題は複雑に見えますが、基本的な視点はシンプルです。順を追って説明します。

個人の相続と会社の相続はどう違うのか

相続とは、亡くなった人(被相続人)の財産を、配偶者や子どもが引き継ぐことです。では、会社を経営していた親が亡くなった場合、その会社ごと相続できるのでしょうか。

答えはYESでもあり、Noでもあります。

親が保有していた自社株式は親の財産ですから、相続の対象です。しかし、会社が所有する建物・車・預金などは会社のものであり、相続することはできません。

また、親が会社の融資を個人として保証していた場合、その個人保証債務はマイナスの財産として相続の対象になります。

ポイント:経営者の親から子どもが相続できるのは「自社株式」と「個人保証債務」だけ。会社の財産そのものは相続できない。

自社株式は「経営権」そのもの

とはいえ、自社株式を相続することは、会社を相続することに限りなく近いと言えます。

会社の所有者は株主であり、役員の選任や報酬の決定、定款の変更、会社の合併・解散といった重要な意思決定は、すべて株主総会でなされます。その議決は株式数に応じた議決権の割合で決まります。

  • 過半数(50%超):役員の選任・解任など通常の経営判断
  • 3分の2以上:定款変更・事業譲渡など根幹に関わる重要事項

つまり、自社株の3分の2以上を相続できれば、その相続人が会社の経営権を実質的に引き継いだと言えるのです。

経営権をスムーズに引き継がせるには「集中」が鉄則

ここに、経営者の相続特有の難しさがあります。

自社株を法定相続割合で機械的に分けてしまうと、後継者一人に3分の2以上を集めることができなくなります。たとえば子ども2人で2分の1ずつ相続すれば、どちらも単独では重要事項を決定できない状態になります。

したがって、後継者と見込む特定の相続人に自社株を集中して相続させる必要があります。その際に注意しなければならないのが遺留分です。

子ども2人(長男・次男)が相続人の場合、次男の遺留分は相続財産の4分の1(25%)です。仮に自社株だけが財産であれば、長男に全株式を相続させることはできますが、次男はその評価額の25%分を長男に金銭で請求する権利を持ちます。自社株を売却して支払うのでは本末転倒ですから、次男向けに預貯金や不動産など別の財産を用意しておく対策が必要になります。

自社株を後継者に集める3つの方法

① 遺言

遺言がない場合、自社株も他の財産とともに相続人全員による遺産分割の対象となります。話し合いがまとまらなければ、株式が分散したまま長期間宙に浮く事態にもなりかねません。

親が元気なうちに、後継者へ自社株を相続させる旨の遺言を作成しておくことが最善です。法的に無効なものでは意味がないため、公正証書遺言か、自筆証書遺言の法務局保管制度の利用をお勧めします。

② 生前贈与

後継者へ計画的に自社株を贈与していく方法です。親が「この子が後継者」という姿勢を周囲に示せるとともに、後継者自身が経営者としての自覚を育む機会にもなります。

贈与額によっては課税対象となりますが、一定の要件を満たせば事業承継税制(税負担の猶予・免除制度)を活用できる場合もあります。専門家と相談しながら計画的に進めることが大切です。

なお、徐々に株式を移転する過程で、親が重要事項への拒否権を持ち続けたい場合は、**黄金株(拒否権付株式)**を活用する方法もあります。この場合は定款変更が必要ですので、こちらも専門家との連携が前提です。

③ 家族信託

生前贈与の応用版として、家族信託という仕組みがあります。信託契約により、親が委託者兼受益者、後継者が受託者となり、自社株の管理・運用を後継者に委ねます。

この方法では、株式の名義だけを先に後継者へ移すことができます。後継者は受託者として議決権を行使でき、実質的な経営権を取得できます。一方、配当などの利益は親(受益者)が引き続き受け取れるため、親の生活資金も確保されます。そして、親が亡くなった後は、あらかじめ定めた通りに株式が後継者のものとなります。

生前贈与が権利を段階的に移転していくのに対し、家族信託は経営権(議決権の行使)を一挙に移しながら、利益だけ親に残すという点が大きな違いです。後継者は必要に応じて親から経営のアドバイスを受けながら、早い段階から実質的な経営者として動くことができます。

まとめ

経営者の相続は、「自社株をどう動かすか」に尽きます。預貯金や不動産と異なり、分散させることで会社そのものが機能不全に陥るリスクがあるのが自社株の特殊性です。

遺言・生前贈与・家族信託のいずれの方法も、早めに着手するほど選択肢が広がります。また、税務面では税理士、法務面では司法書士や弁護士との連携が必要になる場面もあります。行政書士は、遺言書の作成支援や遺産分割協議書の作成など、手続きの入口部分をお手伝いできます。まずはお気軽にご相談ください。

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