フィリピン人子供呼び寄せ、SPA特別委任状 杉並区 | 行政書士中村光男事務所

日本に住むフィリピン人女性が、フィリピンに残してきた未成年の子どもを短期滞在で呼び寄せたい――実務ではよくあるご相談です。

とくに、結婚せずに出産した子(非嫡出子)を親族の付き添いで渡航させる場合、フィリピン側で3つの手続きが必要になります。この記事では、2024年のDSWDガイドライン改正も踏まえ、実際のケースをもとに手続きの全体像を整理します。

今回のケース

母親はフィリピン国籍で、日本人男性と結婚して関東地方に住んでいます。フィリピンにいた頃に別の男性との間に子どもが生まれましたが、婚姻はしていません。この子(仮に11歳とします)は現在フィリピン・X市で母方の家族と暮らしており、パスポートは持っていません。

母親はこの子を短期滞在で日本に招きたいと考えていますが、自分は日本を離れられないため、フィリピンにいる親族に付き添いと各種手続きの代行を頼むことにしました。

フィリピンの法律では、非嫡出子の親権は母親のみに帰属します。
そのため、今回の手続きはすべて母親単独の意思で進めることができ、生物学上の父親の同意や関与は不要です。

フィリピン側で必要な3つの手続き

子どもが日本に渡航するまでに、フィリピン国内で以下の手続きを順番に進める必要があります。

なお、フィリピンでは18歳未満が「未成年(minor)」とされ、パスポート申請でもDSWDトラベルクリアランスでも、親の同意や関与が求められるのはこの18歳未満の子どもです。

フィリピンでは児童の人身売買が深刻な社会問題となっており、18歳未満の子どもが親の同伴なしに出国する場合、DSWD(社会福祉開発省)が「この渡航は正当な理由があり、子どもの安全が確保されている」と確認した上でトラベルクリアランスを発行します。これがないとフィリピンの空港で出国を止められます。
さらに、13歳未満の子どもは単独での海外渡航が認められておらず、必ず親または付添人の同伴が必要です。今回のケースでは子どもが11歳のため、親族の付き添いが不可欠です。

また、フィリピン国籍者は日本への入国にビザが必要です。

そこで、未成年の子どもがパスポートを持っていない場合のフィリピン側の手続きは、次の3段階となります。

① パスポート取得(DFA:フィリピン外務省) → ② DSWDトラベルクリアランス取得(DSWD:社会福祉開発省) → ③ 短期滞在ビザ申請(在フィリピン日本大使館)

このうち①と②はフィリピン国内の手続きですが、日本にいる母親が事前に準備しなければならない書類があります。

パスポート申請に必要な母親のSPA

子どもがパスポートを持っていない場合、まずDFA(フィリピン外務省)でパスポートを申請します。未成年者のパスポート申請には原則として親が付き添う必要がありますが、母親が海外にいて付き添えない場合は、母親が作成したSPA(Special Power of Attorney=特別委任状)が必要です。

在東京フィリピン大使館がパスポート申請用のSPA書式を公開しており(spa-pp-202110.pdf)、この書式では以下の事項を委任できます。

  • DFAでのパスポート申請における子どもへの付き添い
  • DSWDトラベルクリアランスの申請
  • 日本のビザ申請
  • PSA出生証明書などの個人書類の取得

ここで取得するPSA出生証明書は、パスポート申請だけでなく、後のビザ申請でも母子関係を証明する書類として使えます。つまり、このSPA 1通で、フィリピン国内の親族が行う主要な手続きをほぼカバーできる設計になっています。

SPAの公証方法:2つの選択肢

SPAは公証を受けなければ有効な書類になりません。日本で公証する方法は2つあります。

方法A:フィリピン大使館(六本木)での領事公証

フィリピン大使館の公証サービスを利用する方法です。費用は比較的安く(数千円程度)、フィリピン国内の役所で最も信頼される形式です。ただし、利害関係のない証人2名を連れて行く必要があり、オンライン予約制のため希望日が取りにくいこともあります。

方法B:日本の公証役場での公証+アポスティーユ

日本の公証役場で公証を受け、外務省でアポスティーユ(国際認証)を取得する方法です。証人は不要で、手続きも比較的早く完了します。費用は1万円〜1万5千円程度とやや高めですが、証人の確保が難しい場合や急いでいる場合に適しています。

フィリピン大使館に確認したところ、アポスティーユ付きの書類はフィリピン大使館での領事認証が不要であり、そのままフィリピン国内で使用できるとの回答を得ています。大使館のアポスティーユ説明ページにも同様の記載があります。以前はパスポート申請用のSPAについて「フィリピン大使館での認証が必要」とされていましたが(未成年者パスポート新規申請ページ参照)、フィリピンのハーグ・アポスティーユ条約加盟により、現在はどちらの方法でも有効です。

DSWDトラベルクリアランス~2024年ガイドラインで大幅簡素化

上述のとおり、DSWDトラベルクリアランスは未成年者が親の同伴なしに出国するために必要な許可証です。

2024年のMemorandum Circular No. 22により、要件が大幅に簡素化されました。とくに、付添人がいる場合(今回のケース)は、以前必要とされていた公証済みのSPAやAffidavit of Support and Consent(宣誓供述書)が不要になっています。

必要な書類は以下のとおりです。

  • 母親の手書き同意書(Parental Consent Letter):公証不要。母親の直筆署名があれば足ります。記載事項は、親の氏名、子どもの氏名、付添人の氏名と続柄、渡航先・住所・目的、出発日です。
  • スポンサーの経済能力証明:在職証明書(COE)、銀行残高証明、確定申告書のいずれか1つ。
  • 子どものパスポート

申請はHELPS-MTAポータル(mta.dswd.gov.ph)からオンラインで行います。手続きの過程で、母親・子ども・付添人の3者がGoogle Meetによるオンライン面接を受ける必要がありますが、それぞれ別の場所から参加できます(母親は日本から、子どもと付添人はフィリピンから)。

費用はTravel Clearanceが800ペソ(約2,000円)で、処理期間は書類に不備がなければ最大3営業日です。

なお、非嫡出子の場合は母親のみが申請可能です。嫡出子の場合はどちらの親でも申請でき、オンライン面接には両親の参加が求められるなど、手続きが異なります。

日本側の短期滞在ビザ申請

パスポートとDSWDトラベルクリアランスが揃ったら、在フィリピン日本大使館で短期滞在ビザを申請します。

ビザ申請には、フィリピン側で提出する書類に加え、日本側から招へい人(母親またはその配偶者)が準備する書類が必要です。具体的には、招へい理由書、身元保証書、滞在予定表、住民票、課税証明書・納税証明書、在職証明書などです。

先ほどのSPAで取得を委任したPSA出生証明書は、ここでも母子関係を証明する重要書類として提出します。

まとめ

日本にいるフィリピン人の母親が、非嫡出の未成年の子どもを親族の付き添いで日本に呼び寄せる場合、フィリピン側ではパスポート取得・DSWDトラベルクリアランス・ビザ申請という3つの手続きが必要です。

日本で母親が準備すべき書類の中心は、パスポート申請用のSPAです。このSPAはフィリピン大使館での領事公証でも、日本の公証役場での公証+アポスティーユでも有効であることが確認されています。

一方、DSWDトラベルクリアランスについては、2024年のガイドライン改正で手続きが大幅に簡素化され、付添人がいるケースでは公証済みの書類が不要になりました。母親の手書き同意書と経済能力証明があれば足ります。

非嫡出子の場合は、すべての手続きを母親単独で進められる点も大きな特徴です。手続き全体の流れを正しく理解し、必要な書類を漏れなく準備することが、スムーズな呼び寄せの鍵となります。

中村光男

この記事を書いた人

行政書士中村光男事務所 代表 中村光男(行政書士・防災士・AFP)

東京都杉並区 TEL 03-6356-3571

遺言書・相続・会社設立などのご相談は、お気軽にお問い合わせください。
→ 行政書士中村光男事務所ホームページ
→ お問い合わせはこちら