フィリピンDWSDのMTA手続き 行政書士中村光男事務所

日本で暮らすお母さんのもとへ、フィリピンにいる子どもを短い里帰りに呼ぶ——こうしたご相談は少なくありません。多くの方が「日本のビザさえ取れれば大丈夫」と考えますが、子どもが未成年で、しかも親ではなく祖母や叔父に付き添われて来日する場合には、フィリピン側でもう一つ、見落としてはならない手続きがあります。今日は、日本の査証とは別に必要になる「DSWDの渡航許可」についてお話しします。

「日本に入る許可」と「フィリピンを出る許可」は別物

日本のビザ(短期滞在査証)は、日本の大使館が「日本に入ってよい」と認めるものです。これに対してDSWDの渡航許可は、フィリピンの社会福祉開発省(DSWD)が「未成年をフィリピンから出してよい」と認めるものです。管轄も目的もまったく違います。

ここが盲点になりがちです。たとえビザが下りても、この渡航許可がなければ、子どもはフィリピンの空港の出国審査で止められてしまいます。ビザは「入口」の許可、渡航許可は「出口」の許可、と考えると分かりやすいと思います。

なぜ未成年に渡航許可が必要なのか

背景にあるのは、子どもの保護と人身取引の防止です。フィリピンでは、未成年が親の同伴なしに海外へ渡航する場合——たとえば親以外の親族に付き添われて出国する場合——に、DSWDの渡航許可(Travel Clearance)が求められます。

典型的なのが、次のようなケースです。お母さんは日本人と結婚して日本に住んでいる。子どもはフィリピンで祖母と暮らしていて、その祖母や叔父に連れられて日本のお母さんを訪ねる。このとき、同行するのは「親」ではないため、渡航許可が必要になります。なお、子どもが婚外子(非嫡出子)の場合、渡航に同意できるのは母親だけである点も、実務上おさえておきたいところです。

手続きはオンライン、そして面接があります

いまの渡航許可は、DSWDのオンライン窓口から申請します。親以外の同行者と渡航するケースでは、おおむね次のものが必要です。

  • 母親の同意書(手書き・署名入りで、渡航先・日程・同行者を明記したもの)
  • 費用を負担する人の財力を示す資料(在職証明・課税証明・残高証明などのいずれか一つ)
  • 子どものパスポートと、PSA発行の出生証明書
  • 子どもの証明写真、同行者のパスポート

特徴的なのは、オンライン面接があることです。母親・子ども・同行者の三者が、ビデオ会議(Google Meet)で面接を受けます。母親は日本から、子どもと同行者はフィリピンから、別々の場所で参加してかまいません。手数料はおおむね800ペソほど、書類が整っていれば数営業日で発給され、有効期間は1年です。

段取りのコツは「渡航許可を先に動かす」

私が実務でお伝えしているのは、「ビザより先に、あるいは並行して、渡航許可の準備を進める」ことです。理由は二つあります。

一つは、先ほどの面接の日程調整に時間がかかりやすいこと。もう一つは、取得済みの渡航許可を査証申請の際に示せると、審査のうえでもプラスに働くことです。逆に、ビザだけ先に取れても渡航許可がなければ、子どもは出国できません。航空券を買うのは、ビザと渡航許可の両方の見通しが立ってからにするのが安全です。

まとめ

フィリピンの未成年を日本に呼ぶとき、「日本のビザ」と「フィリピンの渡航許可」は別物です。とくに、親ではなく祖母や叔父に付き添われて来日する子どもには、DSWDの渡航許可が欠かせません。ビザだけを見て準備を進めると、出国直前になって思わぬところでつまずきかねません。

子どもの渡航がからむご相談では、早めに全体像を描き、日本側の査証とフィリピン側の手続きを同時に動かしておくことが、いちばんの近道です。手続きの要件は運用によって変わることもありますので、個別のケースでは早めに専門家へご相談ください。

DSWD渡航許可(フィリピン側)

日本の短期滞在査証(日本側)

中村光男

この記事を書いた人

行政書士中村光男事務所 代表 中村光男(行政書士・防災士・AFP)

東京都杉並区 TEL 03-6356-3571

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