令和8年(2026年)2月24日、出入国在留管理庁が「永住許可に関するガイドライン」を改訂しました。
この改訂により、「在留期間3年のビザを持っていれば永住申請できる」という現在の緩和的なルールが厳しい方向に変わります。
現在、技術・人文知識・国際業務(以下「技人国」)の3年ビザをお持ちで永住を目指している方にとっては、今回のガイドライン改訂の意味を十分理解する必要があります。
何が変わり、どう対応すべきか整理します。
何が変わったのか――「3年特例」の終わり
永住申請の要件のひとつに、「現在持っているビザの最長在留期間をもって在留していること」というルールがあります。就労ビザの最長は「5年」ですが、実務上5年を取得するのはハードルが高いため、これまでは「在留期間3年でも最長とみなす」という特例が続いていました。
今回の改訂で、この特例に期限が設けられました。
2段階の経過措置を正確に理解する
改訂後のガイドライン(注1)の原文は次のとおりです。
「令和9年3月31日までの間、在留期間『3年』を有する場合は、最長の在留期間をもって在留しているものとして取り扱う。令和9年3月31日の時点において在留期間『3年』を有する者については、当該在留期間内に処分を受ける場合、その初回に限り最長の在留期間をもって在留しているものとして取り扱う。」
これを2段階に整理すると、以下のようになります。
【第1段階】2027年3月31日まで 在留期間「3年」を有していれば、最長とみなして永住申請できます。他の要件を満たしていれば、通常どおり申請可能です。
【第2段階】2027年3月31日時点で「3年」を有する者への特例(初回限定) 2027年3月31日の時点で有効な3年の在留カードを持っている方に限り、その在留期間(カードの有効期限)内に許可・不許可の処分が出る場合に限り、かつ初回のみ、最長扱いが適用されます。
ここで重要なのは、「申請すればよい」のではなく、「カードの有効期限内に審査結果が出ること」が条件だという点です。永住申請の審査には現状で8か月〜1年以上かかることも珍しくありません。カードの残存期間が短い状態で申請すると、結果が出る前にカードが切れてしまい、特例が使えなくなるリスクがあります。
以下の表に整理します。
| 状況 | 申請可否 |
|---|---|
| 2027年3月31日までに申請 | ○(3年でも可) |
| 2027年3月31日時点で3年を保有→カードの有効期限内に処分・初回 | ○(初回限定) |
| 2027年4月1日以降に3年で更新された方 | ×(5年取得まで不可) |
また、「初回限り」という制限も見落とせません。第2段階の特例を使って申請し、万一不許可になった場合、同じカードの有効期間内に再申請しても特例は適用されません。次のチャンスは更新で「5年」を取得してからになります。
なぜ中小企業勤務者には「高い壁」なのか
5年が必要になると言っても、5年を取れるかどうかは本人の努力だけでは決まりません。入管は所属機関をカテゴリー1〜4に分類しており、上場企業などカテゴリー1・2であれば5年が比較的得やすいのに対し、中小・零細企業(カテゴリー3・4)では、どれだけ本人の能力が高くても1年か3年しか付与されないケースが多いのが実態です。
ただし、カテゴリー3・4の企業であっても、「決算書の安定性・黒字継続」「申請者本人の専門性の高さ」「雇用契約の安定性」などを丁寧に立証することで、5年が出たケースも実務上あります。絶対に不可能ではありませんが、相当の準備が必要です。
現在の状況別・取るべき対策
① すでに居住歴10年(うち就労5年)の要件を満たしている方
今すぐ申請の準備を始め、2027年3月31日までに申請を完了させることが最善策です。第2段階の特例も理論上は使えますが、「カードの有効期限内に結果が出ること」という条件があるため、残存期間に余裕がある第1段階のうちに動くほうが確実です。
② 要件を満たすまであと数年かかる方
次の更新で「5年」を取ることを目標に、以下の選択肢を検討してください。
- 高度専門職1号への変更:学歴・職歴・年収などのポイントが70点以上であれば、高度専門職への変更が最も確実です。このビザは会社のカテゴリーに関係なく、法律上必ず「5年」が付与されます。さらに永住に必要な在留歴が原則10年から「3年(80点以上なら1年)」に短縮される大きなメリットもあります。ただし最低300万円以上の年収要件がある点は注意が必要です。 ※ただし、技術・人文・国際業務と高度専門職では、転職時の違いがある点⇒「技術・人文知識・国際業務と高度専門職1号(ロ)の違いについて:転職時の手続きに注目」
- 現在の会社で5年を取る準備をする:会社側・税理士・行政書士と連携し、決算書の安定性や専門性の高さを丁寧に立証した申請書類を作成することで、5年が出る可能性があります。
審査の「重点ポイント」は年金・税金の期限内納付
永住審査は技人国ビザの更新とは性質がまったく異なります。「何かマイナス要素がないか」を探す審査であり、特に税金・年金・健康保険の期限内納付が最大の関門です。ガイドラインには次のように明記されています。
「申請時点において納税(納付)済みであったとしても、当初の納税(納付)期間内に履行されていない場合は、原則として消極的に評価されます。」
「後から全額払えば大丈夫」は通用しません。入管は領収日付まで確認します。審査対象期間は年金・健康保険が直近2年間、住民税が直近5年間です。
特に見落としがちな失敗パターンが3つあります。
- 転職時に厚生年金から国民年金への切り替えが漏れ、数か月の空白ができたケース
- 口座振替の残高不足による引き落とし失敗(後日納付しても「遅延」として記録される)
- 配偶者が第3号被保険者から第1号への切り替えを怠ったケース
もし現時点で未納や遅延がある場合は、まず全額納付したうえで、そこから2年間の「期限内納付の完璧な実績」を積んでから申請するのが確実な近道です。
一度不許可になるとその記録が残り、再申請のハードルが上がります。「とりあえず申請してみる」は禁物です。
まとめ
2026年2月の改訂で、技人国3年ビザのまま永住を目指せる期間は限られてきました。状況別の対応を整理すると次のとおりです。
- 今すぐ要件を満たしている方:2027年3月31日を目標に申請の準備を進める。第2段階の特例を使う場合はカードの残存期間に十分な余裕(審査期間を考慮して1年以上)を持って申請する
- 要件まで数年かかる方:高度専門職への変更か、5年ビザを取得できる環境づくりを早急に始める
- 全員に共通すること:まずねんきんネットで直近2年間の納付状況を確認し、税金・年金の期限内納付を徹底する
この記事を書いた人
行政書士中村光男事務所 代表 中村光男(行政書士・防災士・AFP)
東京都杉並区 TEL 03-6356-3571
遺言書・相続・会社設立などのご相談は、お気軽にお問い合わせください。
→ 行政書士中村光男事務所ホームページ
→ お問い合わせはこちら






