PFIと中小企業 杉並区 | 行政書士中村光男事務所

日本でもPFIという言葉が定着してきましたが、「大手ゼネコンの世界」「中小には関係ない」と思っている建設業の経営者は少なくないでしょう。

しかし実態は少し違います。PFIの仕組みと参入の入口を知っておくことは、中小企業にとっても十分に意味があります。

PFIとは何か──通常の公共工事との違い

通常の公共工事は、設計・施工・維持管理がそれぞれ別の契約として発注されます。
施工業者は「建てること」を請け負い、工事が完成して検査に合格すれば契約は終わりです。

PFI(Private Finance Initiative)はこの発想とは異なり、設計・建設・維持管理・運営をひとつのパッケージとして民間に委ね、事業期間(通常15〜30年)にわたって公共サービスを提供させる手法です。
公共側はアウトプット、つまり「どんなサービスを、どの水準で提供してほしいか」を定め、民間側がその実現方法を提案します。

両者の違いを整理すると次のようになります。

項目 通常の公共工事 PFI
契約の単位 設計・施工・維持管理を個別発注 設計から運営まで一括発注
民間の役割 指示された仕様を施工する サービス水準を達成する方法を提案する
資金調達 公共が予算を確保 民間が資金を調達し、公共がサービス対価を支払う
契約期間 工事完成まで 15〜30年にわたる長期契約
評価軸 仕様通りに作れたか 長期間にわたりサービス水準を維持できるか

この違いはとても重要です。

通常の公共工事では「安く、仕様通りに作る」ことが競争の中心ですが、PFIでは「長期間を通じて、いかに効率よく質の高いサービスを提供できるか」が問われます。
次回の記事で詳しく説明しますが、この評価軸をVFM(Value for Money)と呼びます。

日本のPFIはどれくらいの規模か

「PFIは一部の大型案件だけ」というイメージを持つ方は多いのですが、内閣府の資料によると、平成11年度の制度導入から令和6年度までの累計事業数は1,154件(令和7年3月末現在)に達しています。令和6年度だけで94件の実施方針が公表されており、毎年着実に積み上がっている市場です。

対象分野も広く、学校・図書館・公民館・スポーツ施設・庁舎・病院・道路・公営住宅・上下水道など、地域に密着した施設が多数含まれています。規模も数十億円の小規模なものから数百億円を超える大型案件まで様々です。

■内閣府の「PPP/PFI事例集」では、全国の様々なPFIの事例を紹介しています。

東京都のPFI事例──身近なインフラでも動いている

PFIは遠い話ではありません。東京都でも複数のPFI事業が実施されており、その中のひとつが朝霞浄水場・三園浄水場常用発電設備等整備事業です。

この事業は東京都水道局が発注したもので、常用発電設備(コージェネレーションシステム)と次亜塩素酸ナトリウム製造設備を民間が建設・運営し、平常時には電力と熱を、震災時には電力を供給するという内容です。浄水処理で発生する発生土の有効利用も含まれています。事業類型はサービス購入型・BOO方式(民間が施設を整備・所有し、最後まで運営を継続する方式)で、運用開始は平成17年4月、期間は20年間です。

浄水場という市民生活に直結するインフラを、民間の資金と運営力で支えるという典型的なPFIの姿がここにあります。

東京都ではこの他にも多数のPFI事業が実施されています。東京都主税局・財務局のホームページ(https://www.zaimu.metro.tokyo.lg.jp/about/pfi)では、庁舎・学校・福祉施設・スポーツ施設など幅広い分野の事例が紹介されています。自分の業種や得意分野に近い案件を探すうえで、参考になるはずです。

■東京都のHPでは、「東京都のPFI」として、10以上の実例を公開しています。

中小企業はどのような形で参入できるか

PFIの事業主体は、建設・維持管理・運営などの会社が集まって設立する特別目的会社(SPC)です。大手ゼネコンや施設管理会社がSPCの中核を担うことが多いのは事実ですが、中小企業の参入ルートはいくつかあります。

まず最も現実的なのが、SPCへの下請け・協力会社としての参加です。地域の建設会社・設備会社・清掃会社・警備会社などが、維持管理や運営の一部を担う形です。大手が元請けとなるSPCに対して、地域での実績や機動力を武器に入り込む可能性はあります。

次に、地域の中小企業が連携してSPCに加わるケースもあります。地元の建設会社・設備会社・管理会社などが協力して提案に参加し、地域密着という強みを活かす形です。自治体によっては、地元企業の参加を評価項目に盛り込んでいるケースもあります。

また、小規模PFIと呼ばれる案件も増えています。事業規模が比較的小さく、地域の中小企業が主体的に関わりやすいタイプの事業です。

■国交省の「スモールコンセッションプラットホーム」では、小規模なPFIの実例を紹介しています。

アンテナを張るべき理由

PFIへの参入は、いきなり「提案書を書く」ところから始まるわけではありません。まず情報を取ることが先決です。

内閣府のPFI推進室や各自治体のホームページでは、実施方針の公表や事業者募集の情報が掲載されます。また、国土交通省や内閣府が主催するPFI・PPPの説明会や相談窓口も活用できます。

中小企業がPFIを意識すべき理由は、受注機会そのものだけではありません。PFIの仕組みを理解しておくことで、取引先の大手企業がSPCを組成したときに「一緒に参加しないか」という声がかかる機会を逃さずに済みます。知っているかどうかで、参入の可否が決まる世界でもあります。

建設業の許可申請や経営事項審査(経審)の手続きを扱う行政書士として、私はこうした公共調達の変化にも目を向けておくことが、経営者にとって重要だと考えています。PFIへの参加には、許認可・契約・法人設立など、行政書士が関わる場面も少なくありません。

まとめ

PFIは、建設業にとって「知っておくべき市場の変化」のひとつです。すぐに参入を目指すかどうかは別として、大手が組成するSPCの協力会社として声がかかる機会は、情報を持っている会社にしか来ません。まずアンテナを張っておくことが、数年後の受注につながる第一歩です。

一方で、PFIへの参加を現実のものにするには、足元の体制が整っていることが前提になります。建設業許可の維持・更新、毎年の決算変更届の提出、そして経営事項審査(経審)の結果は、公共工事への参加資格に直結します。SPCから「一緒にやらないか」という話が来たとき、経審の点数が低かったり、許可の更新が遅れていたりすれば、せっかくの機会を逃すことになります。

当事務所では、建設業許可の新規取得・更新・業種追加、決算変更届の作成・提出、経審の申請サポートを行っています。「手続きが面倒で後回しにしている」という方は、一度ご相談ください。足元を整えておくことが、PFIを含む公共調達への参加につながる確かな準備になります。

次回は、「VFMとPSC・LCCの関係」をわかりやすく解説します。


本稿は行政書士業務としての法的助言ではなく、公開情報をもとにした情報提供です。

中村光男

この記事を書いた人

行政書士中村光男事務所 代表 中村光男(行政書士・防災士・AFP)

東京都杉並区 TEL 03-6356-3571

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