2026年は、デジタル化への本格的な移行と、人手不足を背景とした労働・取引環境の適正化が同時並行で進む1年となりそうです。
行政書士業務に関係のある分野についての動向をまとめます。
相続 オンライン公正証書の本格化
2026年は、2024年に始まった「相続登記の義務化」への対応が一巡し、次のステップとして「デジタルで遺言を残し、デジタルで相続手続きを行う」流れが加速します。
ポイント: オンライン化により「手続き」は簡単になりますが、「誰に何を相続させるか」という法的な中身(遺言の有効性)の重要性は変わりません。むしろ、手軽に作れる分、後の紛争を防ぐための「緻密な設計」がより重要になります。
1. 2026年「オンライン公正証書」の本格始動
これまで公正証書の作成には、本人が公証役場へ直接出向く必要がありました。しかし、2026年からは「嘱託(依頼)から署名捺印まで」をオンラインで完結できる仕組みが定着します。
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ビデオ通話による本人確認: マイナンバーカードとビデオ通話を活用し、公証人が遠隔で本人確認と意思確認を行います。
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電子署名での作成: 紙の書類への押印に代わり、電子署名を用いることで「電子公正証書」が作成されます。
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場所の制約の解消: 入院中や自宅療養中の方、あるいは遠方に住む相続人が、移動の負担なく公正証書を作成できるようになります。
2. 相続・遺言実務への具体的な影響
特に「遺言書」の作成において、以下のようなメリットと変化が生じます。
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遺言作成の心理的ハードル低下: 「公証役場へ行く」という物理的・心理的な壁が低くなり、早めの終活(遺言作成)が促進されます。
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作成までのスピードアップ: 書類作成のやり取りがクラウドやメールベースで加速し、急ぎの事案(危急時遺言に近い状況など)にも対応しやすくなります。
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原本紛失リスクのゼロ化: 電子データとして公証役場のサーバーに保管されるため、紙の遺言書のような紛失・改ざんの心配がありません。
3. 注意点と「行政書士」の役割
便利になる一方で、デジタルならではの課題も浮き彫りになります。
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「真意」の確認難易度: 画面越しでは「周囲に誰かいて、無理やり言わされていないか(強要)」の判断が難しいため、公証人による確認はこれまで以上に慎重に行われます。
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デジタル格差: 高齢の遺言者本人がIT機器を使いこなせない場合、そのサポート役が必要不可欠です。
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行政書士の介在価値: 2026年は、行政書士が「オンライン公証のコーディネーター」として、事前の案文作成から当日のIT操作支援までを一貫してサポートする業務が標準化しそうです。
【参考】 公正証書の作成に係る一連の手続のデジタル化について(法務省)
2025年10月1日から公正証書の作成手続がデジタル化されます!(日本公証人連合会)
在留資格
2026年度(2026年4月〜2027年3月)の在留資格関連は、2027年の「育成就労制度」開始に向けた「デジタル化の完成」と「管理体制の厳格化」が同時進行する1年となりそうです。
主な動きを時系列とテーマ別にまとめました。
1. 「特定在留カード」の導入(2026年6月14日施行)
2026年度の大きなトピックは、在留カードとマイナンバーカードが一体化した「特定在留カード」の運用開始です。
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1枚への集約: 希望者は、在留カードにマイナンバーカードの機能を統合した新カードを持てるようになります。
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ワンストップ化: これまで「入管(在留手続き)」と「市区町村(住民票・マイナンバー手続き)」で別々に行っていた住所変更や更新手続きが、入管窓口で一括して処理できるようになります。
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顔写真要件の変更: 精度向上のため、これまで不要だった16歳未満の子供も「1歳以上」から顔写真の掲載が必要になる予定です。
【参考】【※2026年6月14日運用開始※】特定在留カード等交付申請について(出入国在留管理庁)
2. 「育成就労制度」施行に向けた最終準備(2027年4月開始への助走)
技能実習制度に代わる「育成就労制度」の施行が2027年4月1日に確定したため、2026年度はそのための「受け皿づくり」が加速します。
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「転籍」ルールの策定: 育成就労の柱である「転籍(本人希望による職場変更)」の運用細則(就労期間や日本語能力の条件など)が公表され、企業はこれに合わせた雇用契約の検討を迫られます。
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監理団体から「監理支援機関」への移行準備: 既存の監理団体が、より厳しい要件を課される「監理支援機関」への認可申請を進める時期となります。
【参考】育成就労制度 (出入国在留管理庁)
3. 在留管理の厳格化と「永住権」の見直し議論
制度のデジタル化が進む一方で、ルールを守らないケースへの対応が強化されます。
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永住許可の取消要件の具体化: 永住者が税金や社会保険料を意図的に滞納し続けた場合に、永住許可を取り消せるようにする改正法に基づき、その判断基準が具体的に示される見込みです。
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「技人国(技術・人文知識・国際業務)」の審査厳格化: 専門職ビザでの単純労働を防止するため、実務実態の確認や、企業側への事後チェックがより厳しくなる動向にあります。
【参考】法務大臣談話(2025年10月)
「今後の出入国在留管理行政の在り方」 「報告書」(出入国在留管理政策懇談会)
4. 手数料の改定(検討段階)
現在、報道ベースではありますが、在留資格の申請手数料(印紙代)を大幅に引き上げる検討が進んでいます。
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永住許可申請: 現行1万円 → 数万円〜10万円単位への引き上げ案。
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更新・変更: 現行4,000円〜6,000円 → 数倍程度への引き上げ案。
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2026年度中にこれらの価格改定が実施されるか、具体的な時期の発表が注視されています。
建設業と運送業
建設業:「担い手3法」の全面施行と労務費の死守
2026年度は、改正建設業法(第三次担い手3法)が完全に定着する「実質的な初年度」となります。
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「標準労務費」を下回る見積もりの禁止: 国が職種ごとに「適切な労務費の基準」を提示します。これに満たない金額で発注を強要した元請(注文者)や、不当な安値で受注した業者は行政指導・勧告・社名公表の対象となります。
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工期ダンピングの受注者側規制: これまで「発注者」にのみ禁じられていた「著しく短い工期での契約」が、2026年度からは「受注者」側にも適用されます。無理な工期での受注そのものが法令違反となり得ます。
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資材高騰への誠実協議義務: 資材価格が上がった際、下請側から契約変更を申し出た場合、元請側には「誠実に協議に応じる努力義務」が課されます。
2. 運送業:荷主を縛る「物流2026年問題」の到来
運送会社自身の残業規制(2024年問題)に加え、2026年度からは「荷主(荷物を出す企業)」に対する強制力が格段に強まります。
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特定荷主への「CLO(物流統括管理者)」選任義務(2026年4月〜): 年間貨物量が一定規模(目安:9万トン以上)の企業は、役員級のCLO(Chief Logistics Officer)の設置が義務化されます。現場任せではなく、経営レベルでの物流改善(荷待ち時間の削減など)が求められます。
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中長期計画の提出と罰則: 特定荷主は物流効率化の計画を国に提出し、実績を定期報告しなければなりません。取組が不十分な場合、最大100万円の罰金や勧告の対象となります。
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下請法から「取適法」への移行(2026年1月〜): 「特定運送委託」として、荷主から運送会社への直接発注も下請規制の対象に加わります。これにより、「契約外の荷役(積み降ろし)」を無償でやらせることが明確に法違反となります。
業界横断の影響:下請規制のアップデート
2026年1月より、従来の下請法が「中小受託取引適正化法(取適法)」へと進化します。
| 変更点 | 2026年度以降の実務への影響 |
| 手形払いの原則禁止 | 支払期日(60日以内)に現金で満額受け取れるよう、サイトの短縮が必須となります。 |
| 価格協議の義務化 | コスト上昇があるにもかかわらず「協議に応じない」「一方的に据え置く」行為は即、法違反の対象になります。 |
| デジタル書面の普及 | 相手方の承諾がなくても、メールやPDF等で発注内容を交付することが可能になり、事務が加速します。 |
この1年は、「法律を盾にして、適正な価格を請求できるか(受注側)」、あるいは「コスト増を受け入れてでも、物流・施工網を維持できるか(発注側)」という、経営判断の質が問われます。
行政書士中村光男事務所について
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