第3回では、転籍の条件を説明しました。今回は、育成就労を支える側の仕組みとして、受入れ企業、監理支援機関、外国人育成就労機構、送出機関のそれぞれが何をするのかを整理します。あわせて、分野ごとに定められている「上乗せ基準」と、その読み方を示す「運用要領」についても説明します。
受入れを考える企業にとっては、「自社に何が求められるのか」「どこを見れば基準が分かるのか」が分かる回になります。
制度に登場する機関
育成就労には、主に次の機関が関わります。
| 機関 | 主な役割 |
|---|---|
| 育成就労実施者(受入れ企業) | 外国人を雇用し、計画に沿って育成する |
| 監理支援機関 | 企業と外国人の雇用をあっせんし、受入れが適正か監理する |
| 外国人育成就労機構 | 計画の認定、実地検査、転籍の支援、相談対応などを行う |
| 送出機関 | 母国で外国人を募集し、事前研修や出国手続きを支援する |
受入れの形には「監理型」と「単独型」があります。監理型は、監理支援機関を通じて受け入れる形で、多くの企業はこちらを利用します。単独型は、海外の子会社や関連会社などの職員を、監理支援機関を通さずに受け入れる形です。
受入れ企業に求められること
受入れ企業は、外国人ごとに育成就労計画を作り、外国人育成就労機構の認定を受けます。そのうえで、計画どおりに育成を進める体制が求められます。
社内の体制
次の3つの役割を置く必要があります。
- 育成就労責任者:育成に関わる職員全体を監督する常勤の職員
- 育成就労指導員:仕事の指導を担当する。その業務について5年以上の経験が必要
- 生活相談員:生活面の相談や助言を担当する
いずれも、過去3年以内に養成講習を修了していることが必要です。技能実習では、指導員や生活指導員の講習受講は義務ではありませんでしたが、育成就労では義務になりました。なお、当分の間は技能実習の養成講習で代えることが予定されています。
守るべき基準
主なものとして、労働・社会保険・税に関する法令を守っていること、過去1年以内に同じ業務の労働者を会社都合で離職させていないこと、雇用契約を結ぶ前に労働条件を直接またはオンラインで説明していることなどがあります。
受け入れられる人数
受け入れられる人数には、常勤職員の数に応じた上限があります。たとえば常勤職員が9~30人の企業であれば、基本は9人までです。技能実習では1号から3号まで段階ごとに枠を見ていましたが、育成就労では1~3年目の合計で上限を見ます。
技能や日本語の育成実績、待遇、法令違反の有無などから「優良」と認められた企業は、この枠が2倍に広がります。さらに、地方の優良な企業が優良な監理支援機関の監理支援を受ける場合は3倍まで広がります。
監理支援機関の役割
監理支援機関は、技能実習の「監理団体」に代わる機関です。受入れ企業との関わりでは、次のような役割を担います。
- 少なくとも3か月に1回、受入れ企業を訪問して監査を行う
- 外国人が働き始めてから1年を超えるまでは、月に1回以上、計画どおりに育成しているかを現場で確認し、必要な指導を行う
- 母国語での相談に対応できる体制や、緊急時に対応できる体制を整える
- 監理支援費の金額をホームページで公表する
また、監理支援機関には外部監査人を置くことが義務づけられています。外部監査人は、養成講習を受けた弁護士、社会保険労務士、行政書士など、育成就労の知識を持ち、監理支援機関と密接な関係のない人でなければなりません。
受入れ企業から見ると、監理支援機関は相談相手であると同時に、チェックする側でもあります。監理支援費の金額や、監査・相談の体制を比べて選ぶことが大切です。
分野ごとの上乗せ基準と運用要領
ここまでは全分野に共通する基準ですが、分野ごとに、所管する省庁が告示で独自の基準を上乗せしています。これを「上乗せ基準」と呼びます。上乗せ基準の告示は、育成就労の17分野すべてで定められています。
上乗せ基準の例
内容は分野ごとに違いますが、たとえば次のようなものがあります。
- 分野ごとに設けられた協議会に加入し、協議で決まった措置を講じること(多くの分野に共通)
- 外国人のキャリアアップの計画を書面で示して説明すること(飲食料品製造業、介護など)
- 事業所が開設後3年以上経過していること(介護)
- 訪問系サービスに従事させる場合のハラスメント対策や緊急時の連絡体制(介護)
どこで確認するか
上乗せ基準の告示は、入管庁の「育成就労制度の制度概要・関係法令」のページの「上乗せ基準告示」の欄に、分野ごとに掲載されています。告示は改正されることがあるため、最新のものを確認する必要があります。
運用要領との関係
告示の内容をどう読み、どう運用するかは、「特定の分野に係る育成就労制度運用要領」で詳しく説明されています。これは全分野共通の「育成就労制度運用要領」の別冊という位置づけで、分野ごとの審査基準なども含まれています。入管庁の「運用要領」のページに掲載されています。
| 文書 | 性格 |
|---|---|
| 育成就労法・施行規則 | 法令(全分野共通の基準) |
| 上乗せ基準告示 | 法令(分野固有の基準) |
| 運用要領(本体・分野別の別冊) | 審査にあたっての解釈や留意事項を示す行政の指針 |
運用要領は法令そのものではありませんが、実際の審査はこれに沿って行われます。基準を確かめるときは、告示と運用要領の両方を見るのが確実です。
なお、2026年11月時点では、分野別の運用要領は13分野で公表されており、介護、建設、造船・舶用工業、農業の4分野はまだ掲載されていません。これらの分野は、今後の公表を待つ必要があります。
まとめ
育成就労は、受入れ企業、監理支援機関、外国人育成就労機構、送出機関がそれぞれの役割を担って成り立つ制度です。受入れ企業には、講習を受けた責任者・指導員・生活相談員を置き、常勤職員数に応じた人数の範囲で受け入れることが求められます。監理支援機関は定期的な監査と指導を行い、そのチェックを外部監査人が担います。
さらに分野ごとに上乗せ基準の告示があり、その読み方は分野別の運用要領で説明されています。受入れを考える場合は、共通の基準に加えて、自社の分野の告示と運用要領を確かめることが欠かせません。
最終回となる次回は、育成就労を終えた後の特定技能へのつながりと、施行時点で技能実習中の人の扱いについて説明します。
参考
- 出入国在留管理庁「育成就労制度」 https://www.moj.go.jp/isa/applications/index_00005.html
- 出入国在留管理庁「育成就労制度の制度概要・関係法令」(上乗せ基準告示) https://www.moj.go.jp/isa/03_00163.html
- 出入国在留管理庁「運用要領」(特定の分野に係る育成就労制度運用要領) https://www.moj.go.jp/isa/applications/nyuukokukanri07_00002.html
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