近年、再生可能エネルギーの導入拡大に伴い、需給調整の切り札として「系統用蓄電池」が大きな注目を集めています。
しかし、いざ事業を始めようとすると、経済産業省や資源エネルギー庁のサイトに似たような規制情報が並んでおり、「結局何を守ればいいの?」と戸惑う方も多いのではないでしょうか。
今回は、系統用蓄電池に関する規制のポイントと、窓口ごとの役割の違いを分かりやすく解説します。
系統用蓄電池は「発電事業」の仲間入り
かつて蓄電池の立ち位置は、発電所なのか需要家設備なのかが曖昧でした。しかし、2022年の電気事業法改正により、出力1万kW以上の系統用蓄電池を用いた事業は、法律上で「発電事業」と定義されました。
電気事業法第2条第1項第14号(発電事業の定義)が改正され、「自らが維持し、及び運用する発電等用電気工作物を用いて…電気を発電し、又は放電する事業」と明記されました。
放電を明示的に含め、省令で定める要件に該当すれば、系統用蓄電池から放電する事業を発電事業と位置付けたのです。
これにより、大規模系統用蓄電池の系統接続権利が明確になり、事業環境が整備されました。
・電気事業法施行規則で「発電事業に係る発電当用電気工作物の要件」を決めています。
発電事業に係る発電等用電気工作物の要件)
第三条の四 法第二条第一項第十四号の経済産業省令で定める要件は、次の各号のいずれにも該当する発電等用電気工作物であって、それぞれの接続最大電力のうち小売電気事業、一般送配電事業、配電事業又は特定送配電事業の用に供するためのものの合計が一万キロワットを超えることとする。
一 出力が千キロワット以上であること。
二 出力の値に占める小売電気事業等用接続最大電力の値の割合が五十パーセント(出力が十万キロワットを超える場合にあっては、十パーセント)を超えるものであること。
三 発電し、又は放電する電気の量(発電又は放電のために使用するものを除く。)に占める小売電気事業等の用に供するためのものの割合が五十パーセント(出力が十万キロワットを超える場合にあっては、十パーセント)を超えると見込まれること。
2 前項の規定の適用については、同一の接続地点に接続している二以上の発電等用電気工作物は、一の発電等用電気工作物とみなす。
このように、の定義によれば、以下の要件を満たし、事業全体で1万kWを超える場合は「発電事業者」としての届出義務が発生します:
-
設備単位の出力: 1,000kW(1MW)以上であること
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接続環境: 小売電気事業などの用に供するため、系統へ逆潮流(放電)を行うこと
ここで注意が必要なのが、「1,000kW(1MW)」という数字です。
つまり、一つ一つの蓄電所の出力が1万KW(10MW)以下であっても、事業会社合計で、1,000kWクラスの蓄電池を複数抱えるような事業モデルも、この「発電事業」となり、届出義務が生じます。

発電事業における蓄電池の位置づけ
2つの窓口、どう使い分ける?
系統用蓄電池に関しては、「資源エネルギー庁」と「経済産業省(産業保安グループ)」が、サイトで情報を出しています。
資源エネルギー庁:発電事業に係る届出義務について
経済産業省(産業保安グループ) :電力貯蔵装置(蓄電池)・蓄電所を設置する場合の手引き
この2つのる情報は、「ビジネスのルール」と「安全のルール」で役割が分かれています。
① 資源エネルギー庁(エネ庁):ビジネスのルール
目的: エネルギー政策の推進と市場の活性化
内容: 発電事業としての届出、市場参加のルール、需給調整市場へのアクセス方法など
役割: 「蓄電池を使ってどう稼ぐか、どう市場に貢献するか」を管轄
② 経済産業省(産業保安グループ):安全のルール
目的: 事故の防止と公衆の安全確保
内容: 「電力貯蔵装置」としての技術基準、火災防止対策、電気主任技術者の選任など
役割: 「蓄電池をいかに安全に設置・維持管理するか」を管轄
いわば、エネ庁が「営業許可」、保安グループが「車検や免許」のような関係性だと考えると分かりやすいでしょう。
2つの窓口の関係
| 項目 | 資源エネルギー庁(エネ庁) | 産業保安グループ(保安) |
| 主な管轄法 | 電気事業法(事業制度面) | 電気事業法(保安・技術面) |
| キーワード | 発電事業、市場、需給調整 | 設備安全、技術基準、自己確認 |
| 主な義務 | 発電事業の届出、事業報告 | 保安規定の作成、技術基準適合 |
| 対象の数え方 | 合計出力(事業の規模) | 設備構成・構造(事故の危険性) |
現状の蓄電所リストに見るトレンド
実際に「発電事業者」として届け出ているリストを見ると、その勢いが分かります。資源エネルギー庁の「発電事業者一覧」(発電事業届出事業者一覧(令和8年1月6日時点))では、全体の1356の発電所のうち、まだ蓄電所は31社ですが、近年増加しており、最近では、合同会社静岡菊川蓄電所が2025年11月に届けています。
蓄電所の運営元も、大手電力会社から新エネルギー系スタートアップ、投資ファンド系まで多岐にわたります。これらは単なる予備電源ではなく、需給調整市場や容量市場を通じて日本の電力網を支える「インフラビジネス」として発展が期待されます。
開発許可上も有利に・・・
系統用蓄電池が電気事業法上の「発電事業」に位置付けられたことは、用地取得や建設プロセスにおいて非常に大きな意味を持ちます。特に都市計画法第29条に基づく「開発許可」との関係では、電気事業法上で「発電事業」と届出できた場合は、都道府県知事による開発許可が不要になる可能性があります。
このことは、事業のスピードや難易度を左右する重要なポイントとなりますが、別途、改めて記載いたします。
参考
系統用蓄電池の現状と課題 (2024年5月29日 資源エネルギー庁)
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